ハインツ・ホリガー(指揮)バーゼル室内管弦楽団

ハインツ・ホリガー(オーボエ奏者、指揮者、作曲家) 

 ■ハインツ・ホリガー 

 

 オーボエ奏者、指揮者、作曲家のハインツ・ホリガーは、現代の最も多才で非凡な音楽家の一人といえるであろう。

 1939年、スイス・ランゲンタール生まれ。ベルン音楽院とバーゼル音楽院で音楽教育を受ける。ヴェレシュ・シャーンドルと、ピエール・ブーレーズに作曲を師事。オーボエはスイスでエミール・カッサノウ、パリ音楽院でピエール・ピエルロ、ピアノをイヴォンヌ・ルフェビュールに師事。 

 オーボエ奏者として、1959年ジュネーヴ国際音楽コンクール、1961年ミュンヘン国際音楽コンクールでそれぞれ優勝。バロック音楽から現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、ホリガー木管アンサンブルとしての活動も行う。作曲と演奏両方を追求することによって、彼は自分の楽器上での技術的な可能性を広げ、また、同時に現代音楽に深く傾倒している。現代を代表する作曲家達がホリガーのために作曲をしている。

 指揮者としては、長年世界の主要なオーケストラや室内楽団と共演している。例えば、ベルリン・フィル、クリーヴランド管、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ウィーン・フィル、チューリッヒ・トーンハレ管、スイス・ロマンド管、ローザンヌ室内管などがある。

 作曲家としても国際的評価を得ており、作品はオーケストラ曲、独奏曲、室内楽曲、声楽曲まで多岐にわたる。オペラでは、チューリッヒ歌劇場で1998年に初演された「白雪姫」(スイスの作家、ロベルト・ヴァルザーによる1901年の同名の小説をもとにオペラ化)、同じく2018年に初演された「ルネア」(19世紀オーストリアの詩人ニコラウス・レーナウを主人公にしたオペラ)で、オペラ作曲家としても注目を浴びている。

 日本には、1990年代前半までは頻繁に来日していたが、その後、しばらく来日が途絶え、2010年より再開。その後、2012年、2014年、2015年、2017年、2019年に来日。多岐に渡りその才能を披露している。2019年の来日公演では80歳を記念して4つのオーケストラと共演し、自作も含む多彩な演目を独自に組み合わせたプログラムを指揮したほか、室内楽の演奏会も開催し、その音楽活動の幅の広さを強く印象づけた。

 オーボエ奏者、指揮者、作曲家としてのホリガーのCDは、ソニークラシカル、SWR Music、audite、テルデック、フィリップス、ECMレーベルなどから多数発売されている。

 

                       

コントラバス奏者と打ち合わせするホリガー。

Photo: Lukasz Rajchert

 

 

■バーゼル室内管弦楽団

 

バーゼル室内管弦楽団(Kammerorchester Basel)は1984年、スイス国内の様々な音楽大学を卒業した若い演奏家を中心に、独立した演奏団体として創設された。その設立の目標に掲げたのは、現代と古典、双方の作品を組み合わせて、かつてない魅力的なプログラムを構築すると同時に、歴史的奏法と現代奏法の両方を踏まえながら演奏することだった。これは、かつて指揮者のパウル・ザッハー(1906-1999)が、同時代の作曲家たちに新作を委嘱し、旧バーゼル室内管弦楽団(Basler kammerorchester)やコレギウム・ムジクム・バーゼルを通じて初演し続けた、進取の精神を受け継ぐものだった。フィリップ・ヘレヴェッヘやトン・コープマンら古楽界を中心に、ウンベルト・ベネデッティ・ミケランジェロら多彩な顔ぶれとコラボレートを展開。特に、1999年から首席客演指揮者を務めたクリストファー・ホグウッドのもとで取り組んだ、ストラヴィンスキー、マルティヌー、ティペットらによるザッハーゆかりの作品の録音(Arte Nova)は、鮮烈なサウンドで大きな反響を呼んだ。

 バーゼル室内管はソル・ガベッタ、エマニュエル・パユ、アンドレアス・ショル、クリスティアン・ベザウデンホウト、イザベル・ファウストら、世界的なソリストと常時共演し、ルノー・カピュソンはアーティスティック・パートナーとして深い関係を持っている。また首席客演指揮者をつとめるジョヴァンニ・アントニーニとはベートーヴェンの交響曲全曲演奏や録音(Oehms Classicsおよびソニー・クラシカル)、《フィデリオ》の上演を行い、イル・ジャルディーノ・アルモニコとともに2032年のハイドン・イヤーに向けてハイドンの107曲の交響曲全曲演奏と録音に取り組んでいる(alpha)。2022年からはフィリップヘレヴェッヘの指揮でメンデルスゾーンの交響曲全曲の録音も予定されている。

 定期演奏会のシリーズは、1876年に開場したバーゼルのコンサート会場で2020年に4年がかりのリニューアルが終わったシュタットカジノの大ホールで開催。オーケストラの本拠地は1935年建立のカトリック教会をコンサートホールに2018~20年にリノベートしたドン・ボスコ音楽文化センターである。