1995年結成。メンバーはRollo Armstrong / ロロ・アームストロング、Sister Bliss / シスター・ブリス、Maxi Jazz / マキシ・ジャズの3人。



フェイスレスはデビュー作『Reverence』(1995）以後の5年のうち4年間をツアーしながら過ごしてきた。彼らの音楽が世界中で受け入れられたことの大きな証であった。彼らを必要とする国・都市にはどこにでも出向き、プエルト・リコの砂浜で、またはトルコで武装警官に囲まれて、といったように様々な場所のステージに上がってきたのだ。UKのメインストリームからは長らく無視されてきた彼らだったが、それらのツアーから本国に戻る頃にはシングル「Insomnia」や「Salva Mea」といったハウス・トラックがヒットしており、一躍英雄の座を勝ち得たのだった。ダンスミュージック・シーンに決定的な影響を与えた彼らの音は、たびたび真似されることこそあれ、そのオリジナルを上回られることは決してなかった。house、blues、soul、rap、folk等幅広い音のミックスは、やはり他からは一歩抜きんでていると断言できる。既存の音楽ジャンルではくくれないまさに「フェイスレス」というジャンルを作り出したと言える。

かつて「楽器を弾けない、リズムに合わせて踊れない、メロディーを覚えられない」と告白したロロはライヴでステージに上がりプレイすることはない。シスター・ブリス曰く、彼らのスタジオでの関係は「テレパシーで結ばれた共同生活」。「テクスチャーやカラーの鍵を握るのは彼。彼が『悲しげに。雨の日のように。雷のように』みたいに指示を出してくれる。」



脱退したメンバー達は「フェイスレスとはロロのヴィジョンを具現化したものだ」と言ったが、実際は他の2人、シスター・ブリスとマキシ・ジャズもまたサウンドとスピリッツの両方において大きな役割を担っている。マキシ・ジャズはフェイスレスに参加する前に何年もの間ラッパーとして、また海賊ラジオ局でDJとして、また自身のレコードレーベルの経営者として活躍してきた人物。また彼は熱心な仏教徒であり、その信仰が彼のリリックに並々ならぬ力を与えているようだ。そしてライヴの際にフロントマンとしての才能を最も発揮するのが彼だ。シスター・ブリスはクラシック音楽のスキルを備えたピアニストでハウス・ミュージックのプロデューサーとしても成功している。彼女はまた、世界の女性DJ達の中でも群を抜く存在で（リーバイス・ジャパン2001年のキャンペーンでの広告キャラクターとして「ジーンズは穿かない、生き方を穿く」のコピーとともに雑誌広告に起用されてもいる）、フェイスレスの新曲を12インチ盤で実際にクラブ・プレイしてロードテストする役目も負っている。

シスター・ブリスとマキシ・ジャズは今やバンドの顔とも言える。恐ろしく知的な2人。マキシの仏教徒としての世界観がブリスのハウス・ミュージックに関する百科事典級の知識を支えている。デビュー作『Reverence』リリース後の18ヶ月に及ぶツアーについて一番はっきりと物を言ったのも彼女だ。「結果として、全てのものがワープして私たちはお互いを憎み合うことになった。」



しかしそれにも関わらず、また後に言われるような「『Sunday 8pm』は気の沈むような陰鬱なレコードだ」という批判にも関わらず、このレコードは記録的なセールスを記録し3曲のヒットシングルを生んだ。そのうちの一つが『God Is A DJ』だ。1999年にはThe Brit　Awards、MTV Europe Awards、そしてMercury Prizeにノミネートされた。今日までに『Sunday 8pm』が120万枚以上、『Reverence』が150万、そしてシングルは合計400万枚売れている。彼らはヨーロッパ最大のダンス・アクトだ。



南アフリカではプロディジーとのダブル・ヘッドライナーとして、またMuzik Awardsツアーではヘッドライナーとして、彼らは今日におけるベスト・ダンスアクトとして認知されている。マキシは言う「ステージに上がると、60代の人やディスコ世代の人、30代の人も観客の中にいるのが分かる。目を閉じて集中して聴きながら、好きなところに来ると拳を振ってるんだよ。フェイスレスの典型的なファンなんてものは存在しないし、その事がまた嬉しい」。ブリスが付け加える「私たちはギグに来てくれたお客さんに、高揚と変容と力を味わって欲しい。」

2004年秋には朝霧ジャムでヘッドライナーとして来日し、遂にその「ヨーロッパ最大のライブ・ダンス・アクト」としてのパワーを存分に証明した彼らは2005年に初のベスト・アルバム『ザ・グレイテスト・ヒッツ』をリリース。そして今年、2年ぶりとなる、間違いなくダンス・シーンの傑作ニュー・アルバム『トゥ・オール・ニュー・アライヴァルズ』が完成した。