HIP HOPを”POP”にしたオリジネイタ―=デ・ラ・ソウル、12年ぶりの新作発売後“初”の単独公演敢行!本日最終日!
1989年のデビューから25年を超えてなおHIP HOPシーンに絶大な影響力を誇るデ・ラ・ソウル。デビュー作『スリー・フィート・ハイ・アンド・ライジング』の発表以降、当時の主流であった「ゴールド」、「銃」などのマッチョイズム的HIP HOP感を排除し、よりコミカルで等身大な内容の歌詞とジャズ、ファンク、ディスコからロックまで多様なジャンルの音楽をサンプリングした、緻密でポップなサウンドで90年代に生まれた新たなHIP HOP=<ニュー・スクール>と呼ばれた新たなムーヴメントを牽引。日本でいう<文系/草食系ラップ>を提示し、HIP HOPカルチャーの多様化を世界中に産み落としてきた彼らが、ニュー・アルバム『アンド・ザ・アノニマス・ノーバディ』を引っ提げ、10月17日(月)ビルボードライブ東京にて約3年ぶりとなる単独公演を行いました。
<ライヴレポ―ト>
「あれ、まだ食ってんの? まじか。ここ、飯うまいからね、わかるわ」。ビルボードライブ東京、10月18日夜9時43分。デ・ラ・ソウルのツッコミ隊長、デイヴ(トゥルーゴイ)が全員起立状態の中で食事が終わってないお客さんを一人見つけ、早速絡む。そこから今宵3曲目、コミカルな「ウー」に突入。ターンテーブルの後ろでスクラッチを入れたり、ときにマイクを握ったりと忙しいメイシオ、数々の名ライムを放ってきた名MC、ポス。そろそろ結成30年を迎えるヒップホップの重鎮グループが2013年に続き、六本木の夜景を背中に一斉にマイクを握った。3人とも黒いTシャツをジーンズかジャージ。さっきまで裏庭でBBQをしていた、と言われても納得しそうなカジュアルだが、アメリカでは基本大型フェスにしか出演しない彼らをこの近さで見られるのは、とても贅沢な時間だ。
故J-ディラに敬意を表して名曲「ステイク・イズ・ハイ」を披露し(ここが第1回目ハイライト)、 ヒップホップの6番目(!)の要素として「ヴァイブ」をあげてから、盟友ア・トライブ・コールド・クエストの「ワッツ・ザ・シナリオ」のフックを挟む。英語が第一言語ではない観客の乗せ方も完璧。年齢層や好きな音楽のアンケートを実施し、コール&レスポンスを促す。「ブレイカダウン」、「バディ」などの有名曲では会場全体がひとつとなった。お客さんも濃くて、最前列にはアルバムを手に参加している人もちらほら。最新作『アンド・ジ・アノニマス・ノーバディ』はクラウド・ファンディングで制作費を募り、目標金額の6倍近くをあっという間に集めて話題になった。結果、 豪華になった参加アーティストをデイヴが紹介しようとするも、「ジル・スコットとアッシャーと、えーと‥」状態になり、客席からCDが手渡されて「そうそう」と言いながら無事に読み上げたひと幕では会場全体が笑いに包まれた。期間限定で過去のクラシック作品のフリーダウンロードを敢行するようなグループだから、私も含めてファンは彼らの人間性とアーティスト性を信じているのだ。
ド級の名曲「ア・ローラー・スケーティング・ジャム・ネームド(サタデーズ)」から「ミー、マイセルフ&アイ」に流れ込み、フックとコーラスをこれまた全員で大合唱。ここが恍惚となるほど、楽しかった。 徹底的にサンプリングを重視してきた彼ららしく、曲間には名曲、名フレーズを挟む。古い音楽ファンはそれがたまらないし、最近ヒップホップにハマりだした人もヒップホップカルチャーに触れる手がかりが多く、心底楽しめるステージは、職人芸だ。
アンコールで戻ってきて、3人揃っての「リング・リング・リング(ハハ・ヘイ)」。この曲が入った2枚目のタイトルが『デ・ラ・ソウル・イズ・デッド(デ・ラ・ソウルは死んだ)』と知ったとき、ショックのあまり涙目になったことを思い出した。「死ぬどころか永遠に元気だよ、デ・ラ・ソウル・イズ・エターナルだよ」と、25年前の自分に教えてあげたい、と思いながら帰途に着いた。デ・ラ・ソウルの「過去」から「今」が凝縮された、素晴らしい夜になったことは間違いない。
(文:池城美菜子)
前作から12年の時を経て通算8作目となった、スタジオ・アルバム『アンド・ザ・アノニマス・ノーバディ』はメンバーが全員揃ってのスタジオ・アルバムとしては2004年に発表された『ザ・グラインド・デイト』以来の作品。ファンからのレコーディング支援を集うクラウドファンディング・サービスを採用しで、目標額11万ドルを大きく上回る60万ドル以上の資金を集めたことでも大きな話題になりました。今作にはグラミー賞に22回ノミネート、うち8回の受賞歴を持ち、同じく今年ニュー・アルバム『ハード・トゥ・ラヴ』を発表したばかりの<アッシャー>や、西海岸HIP HOPシーンが生んだ伝説的ラッパーでありアルバム総セールスが3,000万枚を超える<スヌープ・ドッグ>、NYアート・パンクの祖<トーキング・へッズ>の主要メンバーであり、日本では映画『ラストエンペラー』の音楽を手がけ、坂本龍一と共に87年度アカデミー賞作曲賞を受賞したことでも知られる<デヴィッド・バーン>など、デ・ラ・ソウル史上最高とも言える多彩な豪華ゲスト陣が参加。さらに国内盤CDには、90年代中盤にイギリスで沸き起こった”ブリット・ポップムーブメント“を牽引してきた、イギリスを代表するロックバンド、<ブラー>のフロントマンであり、ゴリラズとしての活動でも知られる<デーモン・アルバーン>がボーカルとキーボードで参加している「ヒア・イン・アフター」と、アルバムのラストを飾る「エクソダス」の2曲のインストゥルメンタル・バージョンを追加収録し、更に映画化もされたヒットシリーズ「TOKYO TRIBE」、「隣人13号」などの作者でも知られる、漫画家の井上三太が今作の為に特別に書きおろしたスペシャルなイラスト・ステッカーも封入された、デ・ラ・ソウル愛に溢れた内容になっています。
【デ・ラ・ソウル: リリース情報】
ニュー・アルバム『アンド・ザ・アノニマス・ノーバディ』
<国内盤CD>
発売中
SICX-61 / 2,200円+税
ボーナス・トラック2曲収録
初回生産分のみ<漫画家 井上三太によるスペシャル・ステッカー>封入
歌詞対訳 / 解説付き
トラックリスト
1. ジェネシス feat. ジル・スコット
2. ロイヤリティー・ケープス
4. プロパティー・オブ・スピリットキッカー.コム feat. ロック・マルシアーノ
5. メモリー・オブ... (US) feat. エステル & ピート・ロック
6. CBGBS
7. ロード・インテンディッド feat. ジャスティン・ホーキンス
8. スヌーピーズ feat. デヴィッド・バーン
10. セクシー・ビッチ
11. トレイン・レック
13. フーディーニ feat. トゥー・チェインズ
14. ノーズド・アップ
15. ユー・ゴー・デイヴ (ア・ゴールドブラット・プレゼンテーション) feat. デヴィッド・ゴールドブラット
16. ヒア・イン・アフター feat. デーモン・アルバーン
17. エクソダス
18. ヒア・イン・アフター (Instrumental)★
19. エクソダス (Instrumental)★
★=日本盤ボーナス・トラック
<配信/輸入盤CD>
発売中
iTunes購入リンク:
https://itunes.apple.com/jp/album/id1125852337?app=itunes&ls=1
*iTunes、iTunes Storeは、Apple Inc.の商標です。
【ビルボードライブ公演情報】
日程: 10/18(火)
1st: 開場17:30 / 開演19:00
2nd: 開場 20:30 / 開演19:00
会場: ビルボードライブ東京 (東京都港区赤坂9-7-4東京ミッドタウンガーデンテラス4F)
料金: カジュアル8,400円 / サービス9,900円 ※カジュアルのみ1ドリンク付き
公式サイト: www.billboard-live.com
【デ・ラ・ソウル: プロフィール】
ポス、トゥルーゴイ、メイスの3人からなる2MC/1DJのヒップホップユニット。80年代後半から活動を開始。ジャングル・ブラザーズやア・トライブ・コールド・クエストらとネイティブ・タン一派を構成し、1989年に独自のユーモアとセンス、緻密なサウンドで作り上げられた大傑作『スリー・フィート・ハイ・アンド・ライジング』で華々しくデビュー、「マジック・ナンバー」、「ミー・マイセルフ・アンド・アイ」などの未だに語り継がれるヒット・シングルを多数残し、『デ・ラ・ソウル・イズ・デッド』、『ステークス・イズ・ハイ』など数々の名盤でヒップホップ・シーンに変革を巻き起こしてきた。2016年、クラウド・ファンディングを採用し、スヌープ・ドッグ、アッシャーからデヴィッド・バーン、アッシャーまで豪華客演も話題となった12年ぶりとなるスタジオ・アルバム『アンド・ザ・アノニマス・ノーバディ』を発表した。