エムオーピー

本物のヒップホップに対する闘いへの雄叫びは、ヒップホップ界斬っての勇ましい勇者達、M.O.Pがはっし続けて来た。1993年、リル・フェイムとビリー・ダンジニーの二人は、今ではクラッシックとなった「How‘Bout Some Hardcore」とともに、“ヒップホップ戦争”に備え独自の陣地を掘り始めた。その直後、このブルックリン・ブラウンズビル軍政はヒップホップ戦場に戻り、絶賛を評したアルバム

「To The Death(1994)」、「Firing Squad(1996)」

「Handle Ur Bizness EP(1997)」、「First Family

4 Life(1998)」をリリース、20世紀に永遠の形跡を残した。そして、新しいミレニアムが到来した今、ブルックリンの「ファースト・ファミリー」として名高いM.O.Pが本物ハードコア魂を引提げてシーンに戻って来た。



ラップ界の大御所、ラウド・レコードに移籍後、2000年秋にリリースされた彼等の4枚目のフル・アルバムは、その名も「Warriorz」。このアルバムは彼等のトレードマークである究極のハードコアリズム、ぶしつけで挑戦的なリリック、そして強烈なライブパフォーマンスがギッシリ詰まった彼等の魅力満載のアルバムだ。



長年のファミリーメンバーである、DJ プレミアと組み、6曲以上に及ぶフプレミアのハードでエッジなトラックに彼等のリリックの炎が炸裂する。

「Follow Instructions」や「RollCall」の様なプレミアのトラックに重なる彼等の強烈なリリカルパワーや強烈なビートと並ぶアドレナリン全開!のM.O.Pのボーカルをどんな音楽評論家も否定する事はできない。ピート・ロック、バックワイルド、ロックワイルダー (Redman,Busta Rhymesをプロデュース)、DJスクラッチ、Laze E Laze,才能あるFizzy Womack(M.O.P.メンバー、リル・フェイムの別名)そして、D.R ピリオド(How About Some Hardcoreプロデュース)等のプロデュース陣を迎え、「Warriroz」は間違いなく彼等のリリック的猛威の基盤となるアルバムである。



その上、彼等の粋で桁外れにクールで、時に笑いを誘う厭味たっぷりのリリックは皮肉にも「Calm Down」(落ち着くどころじゃないが)とタイトルされたこの曲に漲っている。フェイムが「この同じブーツでおまえ等全員のケツを蹴り上げてやるぜ」とライムする時のブーツは間違いなくティンバーランドのもの! ブラウンズビルが誇るラッパーは「おまえ等は元祖バック・ストリート・ボ−イズ(裏の世界を知る男達)に盾突いてんだぜ」と言いながら若手ボーイズグループを非難する。ポップスター達よ、気をつけろ!路地からフロントヤードまで、M.O.P.は彼等がニューヨークストリートのキングであることを明確に証明する。



「Warriorz」の製作で、今回M.O.P.はライブパフォーマンスでは恒例、彼等のトレードマークである観客総動員する勢いのハイエネルギーを録音スタジオへ持ち込んだ。最初にストリートを熱くする「G Building」とファースト・シングル

「Ante Up(Robbing−Hoodz Theory)はこの夏のテーマ曲として聴く者の耳を強打する。



時速180マイルの18車輪と同じ強烈さで、「Ante Up」はニューヨークのクラブでM.O.P.がパフォームするのと同じくらいのライブさをアルバムに出している。

同じように、騒々しい単調旋律のタイトル曲「Worrior」はM.O.P.のリリックにおける戦略の即時性が顕著に表れた曲になっている。闘いの賛歌はWWFより一層の積極性を見せ付け、昼メロよりもっとドラマチックだ。ヒップホップとロックのコラボレーションバンドが続々と誕生する今日この頃だが、ラップ界最大のハードロックスターであるM.O.P.がこのトレンドに火を点けたのは言うまでも無い。そして、その成果のもと、M.O.P.の熟練した才能が開花するのも間違いの無い事である。



この状況の中、M.O.P.からまた新たなマスターピースが登場。幅広い人種の層からなるアンダーグラウンドファンと大音量のウーファーサウンド、極度に難解なリリック、アンダーグラウンドなラップエリアに10年も身を潜めながらよりパワフルさを増すグループが彼等の他にいるだろうか?ハードコア対するにM.O.P.の不滅の情熱を象徴するこのアルバム「Warriorz」(そうだぜ、俺達はロウな感じが気にいってんだ)ヒップホップに敬礼。



“NEW YORK GIANTS”~対ビッグ・パン戦

 故ビッグ・パンの遺作にして大傑作なセカンド・アルバム『YEEEAH BABY』(2000年)収録曲。ま、タイトルからしてもう男汁全開な感じだが、中身も当然凄い。本来、M.O.P.のサード・アルバム『FIRST FAMILY 4 LIFE』で予定されていた両者のコラボレーションが、パンのあまりの多忙ぶりによって中止を余儀無くされたという経緯もあるだけに、力の入り具合もハンパじゃない(ま、いつもという話もありますが)。なお、パンが倒れたのは、この曲の完成直前の出来事だったという(涙)。R.I.P.



“READY FOR WAR”~対バスタ・ライムズ戦

 アメリカン・ショウビジネス界をドレッドを振り乱しながら全力疾走する生粋の超エンターテイナー、バスタ・ライムズの最新アルバム『ANARCHY』(2000年)収録曲。チープなキーボードの音色及びフレーズと仰々しい男性コーラスとのミスマッチな取り合わせが実に妙なソウルフルさを醸し出すトラックの上で、野生対野性の闘いが始まる。レコーディング・スタジオでは一体どんだけのツバと汗が巻き散らかされたんだろう。



“BUCKTOWN REMIX”~対ココ・ブラヴァス戦

 これだけちょいと古いが、同じブルックリンをレペゼンする仲間たち=ブートキャンプ・クリックのココ・ブラヴァス(元スミフン・ウエッソン)との共演シングル(98年)。冒頭、アコースティック・ギターのループにビリーが噛み付き、そこにマシンガン連射のごとくバスドラが叩き込まれた瞬間に、本誌記者も思わず昇天。カッチョイイー!



“THE MASTAS”~対バンピー・ナックルズ戦

 実はコレを紹介したかったがためにあえてここで客演モノを取り上げたという噂もある素晴らしい曲。暑苦しさなら負けやしないバンピー・ナックルズこと鉄人フレディ・フォックスがM.O.P.と再びフル・コンタクト!!(一発目は、前作収録の“I LUV”)まるで両者が核融合→核爆発を起こしたかのようなとてつもない肉弾パワーで全編がムセ返っている。うーん、ドッチもスゲエなあ。フレディ自身による男汁ド・ファンク・ビートがまたイイんだ。大傑作ニュー・アルバム『INDUSTRY SHAKEDOWN』収録。みんな聴くように。ビリーがフックで参加してる曲もあるぜ。



“HOW ABOUT SOME HARDCORE”対グランジ・イズ・デッド戦

ラウド・レーベルの生んだ名曲の数々(当然ヒップホップ)を、ロック・アーティストがカヴァーした話題のアルバム『LOUD ROCKS』収録曲。90年代を代表するロック・プロデューサー、ブッチ・ヴィグのユニットが、M.O.P.のデビュー曲をゴリゴリのロック・サウンドでカヴァーしたモンで、ま、これは特別編って感じだが、新たに録音されたM.O.P.のヘヴィ・メタルなラップ(ファースト・アルバムやミニ・アルバム『HANDLE UR BIZNESS』でも、彼らはヘヴィ・メタルっぽいサウンドにアプローチしている。好きなんでしょう、多分)の切れ味があまりに凄過ぎるんで、興味のあるヒトは是非。