巨匠コンドラシン渾身の名演・名録音。この鮮烈かつダイナミックなサウンドこそ、リビング・ステレオ最高の名盤に相応しい。~タワーレコード x "Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション 第2回発売 道化師&仮面舞踏会~ロシア管弦楽名演集/キリル・コンドラシン
道化師&仮面舞踏会~ロシア管弦楽名演集/キリル・コンドラシン
Masquarade Suite & The Comedians / Kirill Kondrashin
■品番:SICC10244 ■ハイブリッドディスク4枚組|SA‐CD層は2ch
■発売日: 2017年6月21日 ■定価: ¥2,500+税 ■音匠レーベル使用
■通常のプラスティック・ジュエルケース ■レーベル: Sony Classical
■海外リリース:1999/01/01 ■日本独自企画 ・完全生産限定 ■世界初SA-CDハイブリッド化
[収録曲]
ハチャトゥリアン
1.組曲「仮面舞踏会」
(1)ワルツ (2)夜想曲 (3)マズルカ (4)ロマンス (5)ギャロップ
カバレフスキー
2.組曲「道化師」 作品.26
(1)プロローグ (2)道化師のギャロップ (3)行進曲 (4)ワルツ (5)パントマイム (6)間奏曲 (7)抒情的小シーン (8)ガヴォット (9)スケルツォ (10)エピローグ
チャイコフスキー
3.イタリア奇想曲 作品.45
リムスキー=コルサコフ
4.スペイン奇想曲 作品.34
(1)アルボラーダ (2)変奏曲 (3)アルボラーダ (4)シェーナとジプシーの歌 (5)ファンダンゴ・アストゥリアーノ
オスカー・シュムスキー(ヴァイオリン)[スペイン狂詩曲]
RCAビクター交響楽団
指揮:キリル・コンドラシン
[録音] 1958年10月29日(3、4)、1958年10月30日(1、2)、ニューヨーク、マンハッタン・センター
[プロデューサー] リチャード・モア
[レコーディング・エンジニア] ルイス・レイトン
[初出] 1&2:LM/LSC-2398 (1960年4月) 3&4:LM/LSC-2323 (1959年8月)
[日本盤初出] 1&2:HP105(1960年9月) 3&4:LS-2262 (1960年1月)
[アナログ・トランスファー、リミックス、リマスタリング・エンジニア] アンドレアス・K・マイヤー(マイヤーメディアLLC)
[アートワーク]
表1 「イタリア奇想曲」「スペイン奇想曲」のアメリカ初出盤のジャケット・デザイン使用
表4 「仮面舞踏会」「道化師」のアメリカ初出盤のジャケット・デザイン使用
[ライナーノーツ]
詳細未定 レコーディング時のメンバー表を掲載予定
巨匠コンドラシン渾身の名演・名録音。この鮮烈かつダイナミックなサウンドこそ、リビング・ステレオ最高の名盤に相応しい。
■コンドラシンの全録音を代表する極めつけの名盤
東西冷戦下、クライバーンが第1回チャイコフスキー・コンクールで優勝したときに伴奏していたことで、ソ連の指揮者として西側で名が知られるようになったロシアの名指揮者キリル・コンドラシン(1914-1981)。ボリショイ劇場常任指揮者(1943-1956)、モスクワ・フィル(1960-1976)のポストを歴任し、ショスタコーヴィチの交響曲第4番・第13番の初演や史上初の交響曲全集録音を成し遂げたコンドラシンがアメリカを訪れた際に録音したのが当アルバムの4曲のショーピースです。コンサートマスターに名手オスカー・シュムスキー(1917-2000、「スペイン狂詩曲」のソロも披露)をむかえ、ヴィオラにワルター・トランプラー(1915-1997)、チェロにハーヴェイ・シャピロ(チェロ、1911-2007、元NBC響首席)、フルートにジュリアス・ベイカー(録音当時はニューヨーク・フィル首席、1915-2003)、オーボエにロバート・ブルーム(1908-1994、ワルター指揮コロンビア響のモーツァルト「リンツ」のリハーサルで名指しされている名手)、ホルンにジョゼフ・イーガー(1920-2013、ニューヨーク・フィル副主席やロス・フィル首席を歴任し、シェリングとブラームスのホルン三重奏曲をRCAに録音)など、ニューヨーク在住の腕利きの名プレイヤーで特別に組織された録音用のRCAビクター交響楽団(ブックレットにメンバー表を掲載予定)を鍛え上げて、緊張感に富んだシャープな音を引き出しており、コンドラシンのオーケストラ・ビルダーとしての優れた手腕と個性的な輝きを刻み込んだ名盤です。コンドラシンの全録音の中でも、モスクワ・フィルとのショスタコーヴィチの交響曲全集(1961~75年)やマーラーの交響曲集(1961~78年)、あるいはコンセルトヘボウ管とのライヴも含むさまざまな録音と並ぶ代表盤といえるでしょう。
■コンドラシンの世界的躍進の年にニューヨークで録音
この録音が行なわれた1958年は、コンドラシンにとって文字通り世界的躍進の年となりました。4月にソビエトが芸術的威信をかけて開催したチャイコフスキー・コンクールが開催され、アメリカのテキサス出身のヴァン・クライバーンが優勝、5月にはアメリカに凱旋し国中を挙げての祝賀ムードで熱狂する中、コンクールのファイナルを振ったコンドラシンはその凱旋演奏会の指揮者としてクライバーンに指名され、これによってコンドラシンのアメリカ・デビューが実現しました。5月19日のカーネギー・ホールにおけるシンフォニー・オブ・ジ・エア(旧NBC交響楽団)で演奏されたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番はRCAによってライヴ収録され、さらに5月30日の早朝に行なわれたカーネギー・ホールでのセッションではチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が収録され、後者は「史上最も売れたクラシック音楽のレコード」とされるほど大きなセールスを記録しました。それにより指揮者コンドラシンの名前も大きくクローズアップされ、同年秋の再訪米へとつながりました。1958年秋の再訪ではシカゴ響でクライバーンと共演し、さらに予定されていた指揮者の代役で急遽シカゴ・リリック・オペラで「蝶々夫人」を指揮することになり、予期せぬ形でアメリカでのオペラ・デビューを飾っています。さらにニューヨークではシンフォニー・オヴ・ジ・エアの演奏会を指揮し、同時にRCAへのセッションで当盤のためのレコーディングを行なった成果が当盤に収録された4曲です。チャイコフスキー「イタリア奇想曲」とリムスキー=コルサコフ「スペイン狂詩曲」の2曲が1959年に、カバレフスキー「道化師」とハチャトゥリアン「仮面舞踏会」が1960年に発売されました。
「道化師」と「仮面舞踏会」の初出LPのジャケット(ブックレット裏に掲載予定)。絵のように見えますが写真です。 LIVING STEREOの左側に品番が、右側にMIRACLE SURFACEのロゴが加えられているパターン。
■マンハッタン・センターでの4回のセッションで効率よく完成
ニューヨークのマンハッタン・センターにおける2日間のセッションで収録された鮮明で大きな広がりのあるサウンドは、ステレオ初期RCAのリビング・ステレオならではの超優秀録音としても知られています。ここはもともと1906年にオスカー・ハマースタイン1世によって建設されたオペラハウスとして出発し、その後多目的のイベント会場となり、現在も稼働しています(TVスタジオやレコーディング・スタジオも併設)。1922年に建物の7階に増設されたグランド・ボールルームは豊かな響きを備え、特にLP時代の到来以降はニューヨークにおける大規模なオーケストラの録音会場として使われるようになりました(ストコフスキーは好んでこの会場を使い、また1960年のワルター最後の「大地の歌」の収録もここでした)。収録を担当したのは、RCAのLP初期の立役者であるリチャード・モア(プロデューサー)とルイス・レイトン(エンジニア)で、各パートの鮮明さと色彩感を十全に保ちながらも雰囲気のあるサウンドを捉えています。各曲の演奏時間は15分前後であったため、LP片面に余裕を持ってカッティングされており、その優れた音質は瞬く間にオーディオファイルの間で高い評価を得ることになりました。 RCAビクター響は、5月のクライバーンとのチャイコフスキーの録音で起用された「交響楽団」(初出LPではSymphony Orchestra under the direction of Kirill Kondrashinとクジレットされていました)と共通するメンバーが参加しており、当時ニューヨークで録音や演奏会用に臨時編成されるオーケストラの典型的なラインナップであったと思われます。弦の編成はvn18-va6-vc6-cb4とやや小ぶりで、総勢62~68名で構成されていましたが、響きの薄さを全く感じさせないのは一人一人の技量とRCAの録音技術のクオリティの高さを物語るものといえるでしょう。初日の10月29日は、午後2時~5時30分のセッションで「イタリア奇想曲」(12テイク)、午後7時~10時30分のセッションで「スペイン狂詩曲」(15テイク)が収録されています。翌30日は、午前11時~午後2時30分のセッションで「仮面舞踏会」(12テイク)、午後3時~6時30分のセッションで「道化師」(29テイク)で収録されました。1回のセッションにつき1曲という効率のよいスケジュールでしたが、RCAはオーケストラのメンバーに1セッションにつき約3300~3800ドル支払っており、1ドル360円で換算すると当時の邦貨で約517万円というギャラであったことがわかります(同時期のシンフォニー・オブ・ジ・エアの1日2セッションのギャラ8882ドルよりも若干安い)。
「仮面舞踏会」のセッション・シート。10月30日11時~14時半のセッションで12テイク行なわれたことが記されています。
■コンドラシン唯一の録音
コンドラシンは既に1940年代からソ連でレコーディングを行なっており、初期には特にオイストラフ、ギレリス、リヒテルらソ連の名だたる独奏者と共演した協奏曲や、ボリショイ歌劇場でのオペラの録音が目立っています。当時のソ連の録音技術は西側に大幅に遅れを取っていたため、1958年に録音された一連のRCA録音はコンドラシンにとって生涯初のステレオ録音となりました。1981年3月7日、アムステルダムで客死する当日の演奏会のライヴであるマーラーの交響曲第1番にいたるまで、コンドラシンは数多くの録音を残していますが、当盤収録の4曲は彼にとって唯一の録音であり、その意味でも貴重な価値を持っています。
■リマスターについて
初出のリビング・ステレオLPは現在では中古市場で高価格で取引されていますが、その後もカタログには残り、日本では4曲が1枚にまとめられた形で定番化し、1000円盤LPとしても親しまれていました。本格的なCD化は、1999年に発売された、ジョン・ファイファー監修によるBMGクラシックスのリビング・ステレオ・シリーズによってのこと(それ以前に日本では新星堂企画でCD化あり)。2003年には日本ビクターのXRCDシリーズの中でオリジナルLPのカップリングで、新たにリミックス+リマスターが行なわれています。今回は14年ぶりにオリジナルの3チャンネル・マスターからアンドレアス・K・マイヤーによってリミックスとDSDリマスターが行なわれることになります。
『昨年、ヴァン・クライバーンがロシアから凱旋帰国した際、カーネギー・ホールにおけるデビュー・コンサート、およびチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のレコーディングの指揮者としてキリル・コンドラシンを指名しました。自然な成り行きとして、センセーショナルな成功を収めたクライバーンには熱い視線が注がれましたが、コンドラシンの指揮者としての卓越した手腕も高く評価され、その場で秋のRCAへのレコーディングとアメリカ・ツアーが決まったのでした。コンドラシンは現在ロシアではトップランクに属する指揮者であり、色彩的で躍動感のある音楽作りで定評があります。このことは当LPに収録されたチャイコフスキーとリムスキー=コルサコフのオーケストラ曲の演奏からも直ちに実感されるところです。
まずは「イタリア奇想曲」をお聴きください。「スペイン狂詩曲」からの2曲は以前「Destination Stereo」というレコードにも収められていたので、ご記憶の向きもおられるでしょう。ステレオ・サウンドの最高の例の一つなのです。ヴィンセント・シーン[註:アメリカのジャーナリスト・作家。1899-1975]によるライナーノーツと目にも鮮やかなアルバム・デザインも特筆すべきものでしょう。力強く生き生きとした演奏と鮮烈なサウンドとによって、必ずやベスト・セラーとなることでしょう。』 (RCAによるプロモーション用セールスコピーより)
■当アルバムについての過去のレビュー
「チャイコフスキー・コンクールに優勝したクライバーンのアメリカ帰国に同行したコンドラシンが『西側』で録音した記念すべき第一作である。オーケストラは臨時編成のものかもしれないが管のパートなど名手が揃っているようだし、何よりもコンドラシンの、まるで一筆書きのような肉厚で豪快な表現が聴き手を魅了する。」(渡辺茂) (『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.2管弦楽曲編』、1985年)