ヨーマ・コウコネン
60年代初期にはジャニス・ジョプリンのバック・ギタリストとして、その後70年代前半にかけてはベイ・エリア・シーンを代表する伝説的なバンドだったジェファーソン・エアプレインのオリジナル・メンバーとして活躍した天才的なブルース・ギタリスト、ヨーマ・コウコネン。

ジェファーソン・エアプレインでは特徴的なギター・プレイでそのサウンドの礎となり、その一方でサイド・プロジェクトとして活動していたホット・ツナでは情熱的なブルースをたっぷりと聴かせるなど、その音楽的な懐の広さで多くのファンの心をつかんでいた。

本作はその伝説のギタリスト、ヨーマ・コウコネンが放つ久しぶりのオリジナル・ソロ・アルバム。ロバート・ジョンソンなどのデルタ・ブルースの巨匠のスタイルを得意とするコウコネンの魅力が十分に味わえる。ゲストにはジェリー・ダグラス、バイロン・ハウス、サム・ブッシュなどといったブルーグラス界の実力派をそろえ、味わい深い大人の音楽を聴かせる。名手ベラ・フレックも2曲で参加、その卓越した技を披露している。

取り上げている題材は1920年代から30年代にかけての、まだジャズ、ブルース、そしてブルーグラスが明確に分離していく前の時代のアメリカン・ミュージック。ジミー・ロジャーズ、デルモア・ブラザーズ、ワシントン・フィリップスなどといった、まだ人種問題が人種問題として確立される前の時代に、自然と人種を超えて融合していた音楽のスタイルを、枯れた歌声と切れ味鋭いギター・ワーク、さらには熟練のアンサンブルで料理している。

レコーディングはナッシュヴィルの有名なマスターリンク・スタジオで行われた。かつてはウェイロン・ジェニングスやドリー・パートンなどといったビッグ・ネームがレコーディングを行ったこのスタジオでは終始和やかな雰囲気でセッションが進んだ。「4日間で16曲をレコーディングしたんだ」とヨーマは語る。「スタジオにはナッシュヴィルの歴史が詰まっているようだった。音響も素晴らしかったし。僕は1936年製のアドバンスト・ジャンボ・ギブソンを使い、サムは1920年代のマンドリンを持ち込んでいた。ジェリーの楽器はよく分からなかった。なにせ大量のヴィンテージ・ドブロを用意してたからね(笑)。バイロンは100年以上前のウッドベースを使い、ベラは30年代後半のバンジョーを使ってたんだ。そんな年代ものの楽器を手にして、僕らはリラックスした雰囲気で演奏をしたんだ。ヘッドホンすらつけなかった。まるで家で演奏しているようだったよ」。