<ブリット・アワード2017>で、コールドプレイのクリス・マーティンが感動のジョージ・マイケル・トリビュート。元ワム!のアンドリューも登壇。
現地時間2月22日(水)にロンドンのO2アリーナでBrit Awards 2017が開催され、昨年12月25日に急逝したジョージ・マイケルへのトリビュートとして、コールドプレイのクリス・マーティンが登場した。
Brit Awardsは英国レコード産業協会(BPI)によって主催されている英国版グラミー賞とも称される音楽賞で、77年から開催されている。最重要賞である「最優秀ブリティッシュ・アルバム」はノエル・ギャラガーがプレゼンターとなって発表され、デヴィッド・ボウイの『★』が受賞。亡きボウイに代わり、息子ダンカン・ジョーンズが故ザハ・ハディッドによるデザインのトロフィーを受けとった。さらに、ボウイは「最優秀ブリティッシュ男性ソロ・アーティスト」も受賞。こちらは元BBCレディオ1の看板DJだったゼーン・ロウが発表し、ボウイが脚本を手がけてNYとロンドンで上演された舞台『ラザルス』で主役ニュートンを務めたマイケル・C・ホールが代理受賞した。
英国音楽界の巨星による最後の偉業を賛えた一方で、昨年のBrit Awardsでのボウイ・トリビュートに続き、今年はジョージ・マイケルへのトリビュートが行われた。そのセレモニーはスクリーンに昨年亡くなったミュージシャン、音楽関係者の名前と映像が投影されることから始まり、ジョージを筆頭にプリンス、ジョージ・マーティン、キース・エマーソン、ピート・バーンズ(デッド・オア・アライヴ)、レナード・コーエン、そしてボウイの姿が映し出されていった。偉大なアーティストたちが数多く去った年であったことをあらためて思い出させる演出の後に、元ワム!のアンドリュー・リッジリー、そしてワム!の諸作でバッキング・ヴォーカルとして参加したペプシ&シャーリーが壇上に登場。ワム!結成以前からの友人である3人がジョージとの忘れがたい思い出、そして彼のすばらしい才能を讃える追悼メッセージを読み上げ、会場は大きな拍手で包まれた。特にペプシ&シャーリーのふたりは時おり言葉に詰まりながら、涙を流してスピーチ。ジョージへの惜別の思いが伝わってくる感動的なシーンとなった。
そして、アンドリューが「ジョージの不朽なる偉業を称えて、彼の世代における最高のシンガー、ソングライターのひとり、クリス・マーティンです」と紹介し、クリス・マーティンがステージへ。ジョージ・マイケルのソロ名義で86年に発表された「ディファレント・コーナー」のイントロが生ピアノで弾かれ、クリスのまさに絶唱という表現がふさわしい歌声が響き渡る。クリスの背後にはペンライトを掲げた観客、麗しい音色を紡ぐオーケストラ、そして在りし日のジョージを映し出すスクリーンがあり、涙を誘っていた。そして、後半パートに差し掛かるとジョージの遺作となった『Symphonica』ツアーでの歌唱が流れ出し、クリスとの疑似デュエットが実現。不世出のシンガーふたりによる夢の共演に酔いしれる中、プリンスの映像も一瞬インサートされ、涙なくしては見られない演出で幕を閉じた。
先日のグラミー賞では五冠に輝いたアデルがジョージの「ファストラヴ」を歌い、その際のアクシデントも含めて大きな話題を呼んだが、今回のBrit Awardsでのトリビュートが追悼の思いとワム!〜ジョージ・マイケルが遺した音楽の普遍性をさらに強めてくれたことはまちがいない。Brit Awardsの歴史においても、記憶に残る一夜となった。
TEXT:油納将志(British Music in Japan)
Photographer Gareth Cattermole
Photo by Getty Images
【ジョージ・マイケル プロフィール】
(1963年6月25日 - 2016年12月25日)
イギリス出身のシンガーソングライター。父親はギリシャ系キプロス人で、本名ヨルゴス・キリアコス・パナイオトゥ。
1975年に出会ったアンドリュー・リッジリーと81年に結成したポップ・デュオ<ワム!>での活動で「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」「ケアレス・ウィスパー」「ラスト・クリスマス」などの世界的ヒットを連発し、86年のワム!解散後にはソロシンガーとしても比類なき成功をおさめた。とりわけソロ・デビュー・アルバム『FAITH』は、4曲の全米ナンバー・ワン・シングル(「フェイス」「ファザー・フィギュア」「ワン・モア・トライ」「モンキー」)を生んだだけでなく、アルバムとタイトル曲「FAITH」がそれぞれ、88年度ビルボード年間チャートでアルバム、シングルともに首位を獲得。第31回グラミー賞においては、最高の栄誉とされる「アルバム・オブ・ザ・イヤー」も受賞。ソロ・アーティストが、自身による単独プロデュース作で「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を手にしたのは、70年代のスティーヴィー・ワンダー以来となった。自分なりのソウル・ミュージックの解釈を提示し、ソウル・ミュージック自体の幅を拡充し続けたことは、ポップ史上におけるジョージの最大の功績と言える。
【関連動画】
●「ディファレント・コーナー」 MUSIC VIDEO
●「ファストラヴ」 MUSIC VIDEO
●「FAITH(フェイス)」MUSIC VIDEO
●「ワン・モア・トライ」 MUSIC VIDEO
●「フリーダム!90」 MUSIC VIDEO