EVE 6
マックス・コリンズ Max Collins - ヴォーカル、ベース

ジョン・シーベルズ Jon Siebels - ギター、ヴォーカル

トニー・フェイゲンソン Tony Fagenson - ドラムス、ヴォーカル



アルバムを2枚出しただけで「心機一転」だなんてヘン!と思われるかも知れない。だが、もしそれが、十代でファーストCDを出して大ヒットを飛ばし、以来ずっとツアーに明け暮れ、2年かそこらの間に人生の一大変化を経験し、やっと成年に達した若者だとしたら?ここらで人生を見つめ直すことも必要だろう。「まるで竜巻に翻弄されてるみたいだった。2001年の暮れまで、1年半ぶっ通しでツアーに出てたんだから」と、イヴ6の面々は回想する。「普通に暮らす時間が必要だったんだ。そもそも僕らは、“普通”ってどんなことかさえ知らなかったんだよ!」



広く伝えられているように、EVE6は南カリフォルニアのハイスクールを出るや否やRCAレコードと契約を交わした。1998年にバンド名を冠したアルバムで大ヒットを飛ばしてからというもの、彼らはほとんど腰を落ち着ける間もなく疾走してきた。ナンバー1ヒットとなった ”Inside Out” と、続くトップ10ヒット “Leech” の2枚のシングルの成功によって、同アルバムはプラチナ・セールスを記録した。2001年のゴールド・セラー・アルバム Horroscope でも、3人は成功を重ねた。このアルバムは、トップ5モダン・ロック・ヒット “Promise” と、MTV/トップ40ヒット “Here’s To The Night” の2曲を輩出した。こうしたメディア活動のさなか、イヴ6はグッド・シャーロット等のバンドとツアーを行い、サマーソルトやフジ・ロック・フェスといった国際フェスティバルの要を務めることで、着実に地歩を固め、ファン基盤を築いていった。



RCAからのサード・アルバムとなる 本作It’s All In Your Headは、彼らが “Promise” で得た称賛を新たにすることだろう。『ローリング・ストーン』誌は、前作 Horroscope について次のように述べていた。「“スポーツドリンク・ハイなアスレチック・ギター・パンク”とでも呼ぶべきスタイルで畳みかけるEVE6。彼らの次回作は、さらにリッチな作品となることだろう。」その“次回作”が、It’s All In Your Headだ。これ以上リッチなアルバムは望むべくもない。



プロデューサーに新進気鋭のグレッグ・ワッテンバーグを、ミキサーにトム・ロード・アルジェ(ローリング・ストーンズ、ホール、マリリン・マンソン)とジム・スコット(チリ・ペッパーズ、フー・ファイターズ)を迎えた本アルバムは、詞的にもサウンド的にも実に多岐にわたっている。「全員がマイクつけてガンガン歌った。時には1本のマイクにギター3本、とかね。制約をすべて取っ払ったんだ」と、ギター/ヴォーカルのジョン・シーベルズ。「すごく楽しくて、イージーで、しかも民主的だった。このバンドでは、いつだって音楽が最優先なんだ。服のブランドとか映画出演なんかのサイド・プロジェクトは、一切やらない。」



荒削りなサウンド、キレのいいギター、豪快に突き進むリズムセクション、そしてリードシンガー/ソングライター/ベーシストのマックス・コリンズが紡ぎ出す、常に的確な詞。It's All In Your Headは、このバンド一流のインテリジェントでパワフルでパンキーなポップをさらに進化させた。かつてのブリット・パンクを彷彿とさせる “Still Here Waiting” の不敵さ、ディラン風の佳曲 “Hey Montana” の情熱と哀愁、ファースト・シングル “Think Twice” のキャッチーなコーラスと警句、レイヴ全開の “Without You Here” のナーバスなエネルギー。”Girlfriend” では、皮肉屋の切れ者マックスが、ラブ・ソングにクレバーなヒネリを加えている。



長年の友であった3人組――マックス、ジョン、そしてドラムス/ヴォーカルのトニー・フェイゲンソン――が2002年暮れにIt’s All In Your Headの制作に取り掛かった時、彼らの頭の中には、たった一つの考えしかなかった。それは、“自分自身と、自分たちの音楽に正直であり続けること、そして、アーティストとして成長すること”だ。「次のアルバムを作る前に、成長しなきゃって気づいたんだ。僕らがどういうバンドなのかを世に示すためにね」とトニー。両親の元での暮らしから、一気にツアー・バス生活に飛び込み、今、ハタチそこそこで自分の家を持とうとしている彼らにとって、“現実世界”は衝撃的なものだった。「色んなことをやって空洞を埋めようとしていた。“僕らはもう子供じゃない。けど一体どうすればいいんだ?!”っていう、心の空洞をね。みんな少しビビってたんだよ」とトニーは告白する。「このアルバムの制作プロセスは、そんな恐怖心を取り払って、何かに変える作業でもあったんだ。」



ジョンが付け加える。「実質的に、僕らは人生の目的をほぼ果たしてしまった。たかだかハタチかそこらでね。それは、セカンド・アルバムを仕上げるまでは、ボンヤリとした認識でしかなかった。バンドとしての僕たち自身を見つけ出すってことは、自分たちの個性や、人々は僕らのどこに興味を持ってくれるのか、といった根源的なものを見直すことでもあった。その答えがこのアルバムのサウンドに表れてると思う。これまで以上にギター/ベース/ドラムス指向だ。僕らは進化したんだ。」



今現在イヴ6が享受している自由――個人的にも仕事上でも――は、苦労の末にようやく手に入れたものだ。だが、3人はその経験に感謝してると言う。「チャンスははかないものさ。来た瞬間に掴まえなきゃね」とマックス。「人は変化し、成長し、死や金銭問題に向き合う。そうした経験から、人は学び、同時に純粋さを失わないよう努力しなきゃならないんだ。」



「その葛藤が、僕らの音楽の本質なんだと思う」とトニー。「確かに今の僕らは前とは違う。けど、バンドを始めた頃の情熱や希望は今も失っていない。それこそが、このアルバムの二面性でありジレンマなんだと思うよ。」