カトリン・フィンチ
しなやかな指先でハープを奏でる美貌のアーティスト、カトリン・フィンチは1980年にウェールズで生まれた。ハープを弾き始めたのは8才の頃で、著名なハープ奏者エリナー・ベネットに師事。16才にはロンドンのパーセル・スクール・オブ・ミュージックに入学、スカイラ・カンガに師事する。その後王立音楽院に進学、2002年の夏に優秀な成績で卒業をしている。

これまでに数多くのリサイタルを行い、数々の賞にも輝いている(ワールド・ハープ・フェスティヴァル1991:ジュニア部門第1位、同1994:シニア部門第2位他多数)。1990年から1996年の間、イギリスのナショナル・ユース・オーケストラの主席ハープ奏者であり、ロイヤル・アルバート・ホールで行われたBBCプロムナード・コンサート出演の最年少記録保持者でもある。

1999年にはパリで開催されたリリ・ラスキン国際ハープ・コンテストで1位を獲得、翌年3月にはロンドンのウィグモア・ホールで初のソロ・リサイタルを開催している。近年は精力的な演奏活動を行っており、現在最も将来を嘱望されている若手ハープ奏者である。



2000年、カトリンは同じウェールズ出身の偉大な作曲家、カール・ジェンキンズと運命的な出会いを果たす。ジェンキンズは彼が手がける大ヒット・シリーズ『アディエマス』の第4作にカトリンを起用、同年9月にロイヤル・アルバート・ホールで行われた初演にも彼女をフィーチャーしたのだった。

同年の5月、カトリンはチャールズ皇太子(ウェールズ王子)の御用達ハープ奏者に任命された。これは1871年に有名なウェールズ人ハープ奏者、ジョン・トーマスが同様の栄誉に輝いて以来のことだった。これを受けて皇太子はカール・ジェンキンズに、カトリンをフィーチャーしたハープ協奏曲を委嘱し、ジェンキンズは2台のハープのための協奏曲『Over The Stone』を書き上げ、カトリンはこの作品をエリナー・ベネットとBBCナショナル・オーケストラ・オブ・ウェールズと共に皇太子の前で披露したのだった。

カトリンのこの記念すべきデビュー・アルバム『クロッシング・ザ・ストーン』はカール・ジェンキンズの全面的なバックアップを受け、ソニー・クラシカルから2003年にリリースされる。プロデュースもジェンキンズが全面的に手がけ、ジェンキンズの作品はもちろんのこと、バッハ、ヘンデルなどのクラシック作品、さらにはパット・メセニー、デイヴ・グルーシン、スティーヴ・ライヒ、アストル・ピアソラなどの楽曲やウェールズの伝承歌までバラエティに富んでいる。

柔らかくも芯の強いカトリンのハープの音色が、ジェンキンズのクラシカルなロマンティシズムを湛えながらも現代的な感性に満ちた作品に出会い、しっとりとしたハーモニーを奏でる。