ブライアン・マクファーデン
 ソロ・デビュー・アルバムのリリースが刻々と近づいているブライアン・マクファーデンに、現在の心境は?と尋ねると、“とてもオープンでリラックスしたムードだ”という答えが返ってくる。世界で最もビッグなボーイバンドのひとつの、5人のメンバーのうちの1人であったブライアンが、ついにソロ・アーティストとして一本立ちすることになるのだ。24才の彼は、まるで音楽界のベテランのような落ち着きを持ち、同時に若々しさにあふれている。ウェストライフとしては、3500万枚のレコードを売り、UKチャートのナンバー・ワンに12回輝いた。そして今もなお、ブライアンの音楽に対する情熱は、強くなる一方だ。



 率直な語り口で人の心を引きつけるブライアンは、自分のアルバムの大きな部分は自伝的な要素で占められていると説明する。すべての曲に、実話が隠されているそうだ。アルバムの曲の半分はガイ・チェンバーズとの共作、あとの半分はポール・ベリーとプロデューサーのマーク・テイラーとの共作だ。そしてその出来映えはといえば、離れ業としかいいようのない、定番ロックヒットとなるであろう曲の連続だ。ブライアンの歌声の純粋なロックンロールっぽさを見事に引き出した魅力的な作品集に仕上がっている。アルバムのプロデュースを手がけたのは、ガイ・チェンバーズ、リチャード・フラック、そしてマーク・テイラーら。



「スタジオ入りした時点では、なんとなく全体のサウンドの方向性みたいなものは自分の中にあったんだけど、基本的には一からの作業ということだったから、現場ですべて作りながら進んでいったという感じだね。詞のアイディア、コンセプトは、なにしろ自分が山ほど持っていたから、プロデューサーたちと相談しながら、どんどんそれを形にしていったんだ」



「制作開始は2004年の5月。あっという間だったよ。だけど、速いペースで書き上げた作品のほうが、あとから振り返って、一番気に入ったものだったりするんだよね。ポールとは曲作りの波長が最初からぴったりだったし、ガイとは、初めてのミーティングでいきなり「Real To Me」を作っちゃったんだ。滑り出し快調、って感じだったね」



 ブライアンの制作への取り組みは、純粋に音楽にフォーカスを絞ったものだった。ブライアンが自分のアルバムについて語る姿は、初めて自分のアルバムを作ったアーティストだけが放つ、新鮮でわくわくするエネルギーにあふれている。そのエネルギーは、周囲の人間にもどんどん伝染して行く。ブライアンが第一の目標としたことは、まずは今の自分にできる最高のアルバムを作るということ、そして自分らしさというものを本当に表現できるスタイルを見つけだすことだった。その他の要素は、すべて二の次だった。「自分の音楽を作る、一人のアーティストでありたいんだ。それだけは、本当に誇りに思えることだから」と、ブライアンは言う。「もちろん、みんなに気に入ってほしいし、いろんな人に聞いてもらいたいよ。ウェストライフのファンのみんなは、メンバーと一緒に大人になってきているし、みんな、新しいサウンドに耳を傾ける余裕が出てきてるんじゃないのかな」



 このタフな新しいサウンドは、いろいろなバンドの影響を受けているというが、そのひとつは、彼がアイルランドでマネージメントを手がけているフランクリンというバンドなのだそうだ。「今は、マルーン5とスノー・パトロールの大ファン」と、ブライアンは言う、「それから、ギター系はもうずっと前からはまりっぱなし。ブライアン・アダムスからニルヴァーナまで、ね」



 現在、今年の末のツアーに向けて、自分のバンドと一緒にリハーサルに励んでいるブライアン。「それがこのアルバムの特徴なんだよ。ツアーに出るのが待ち遠しくてたまらないよ。ライブにピッタリ来る感覚のアルバムだから、お客さんの前で演奏するのが本当に楽しみなんだ」



ファースト・シングルの「Real To Me」は、情熱的で色彩豊かなギターをフィーチャーした曲で、自分の人生の中での物事の優先順位について考え、自分の主張を持って、自分の居場所を探し出すというテーマになっている。ウェストライフからの脱退について歌った曲であるということは、ブライアンも明言している。また同時に、彼の人生の「現在」を歌った曲は、アルバム中これが唯一のものだということも彼は強調する。このほかの曲に関しては、詞の内容もテーマそのものも、実に多様な部分からインスピレーションを引っ張ってきていて、そのぶん挑戦的なものになっているという。「Irish Son」は地元アイルランドとカトリック教会のコミュニティーの中で育った子供時代のこと、「Walking Into Walls」は、家庭内暴力をテーマに取り上げた。「He’s No Hero」はアルコール依存症とそれが周囲に与える影響について。そして、ドラマティックな一曲「Demons」は、不眠症と悪夢を歌ったものだ。「Lose Lose Situation」という曲についてブライアンは笑いながら、こう言う:「この曲は、どんなにあがいても、女には勝てないよ、っていう曲なんだ」

色彩豊かで、ドラマティック、そして自分の内面を静かに見つめる、心からの音楽。そんな、旅のような一枚のアルバムが完成した。



ブライアンは、ソロ・アーティストとしての自分の声というものをはっきりと見つけだし、成熟した内容を語る鋭敏な音楽を、エネルギーと情熱を込めて表現した。リスクを恐れず、新しいサウンドで実験しつつ、同時にブライアンは今まで歩んできた道を誇りに思うことも忘れてはいない。ウェストライフという、たぐいまれなグループの一員だったことを、誰よりも深く心に刻んでいるのは彼自身なのだ。



「ここまで来れたことは本当に神様のめぐみだと感謝しているよ。自分が大好きな音楽を作って行けることが本当に嬉しくてたまらない。今は、それだけだね」





☆about WESTLIFE(ウエストライフ)

99年、バックストリート・ボーイズやイン・シンクらによるボーイ・バンド旋風が吹き荒れる中、ブライアン、マーク、シェーン、ニッキー、キーアンからなるアイルランド出身の5人組で、ムーヴメントの後発組としてデビュー。普遍的でエヴァーグリーンなラヴソング、歌/ヴォーカル/コーラスワークを中心に据えたオーソドックスなスタイルを打ち出したウエストライフは逆に新鮮で確固たる個性としてシーンに迎えられ、全世界で3500万枚以上のトータル・セールスというメガヒットを記録!UKシングルチャートに至っては、デビューシングルから7曲連続初登場NO.1獲得でギネス・ブック認定!!という前代未聞の快挙も成し遂げる(現在までにリリースしたシングル全17曲中12曲、アルバム5枚中4枚でUKチャートNo.1を獲得し、頂点の座を揺るぎなきものにしている)。ボーイズ・グループとしては勿論のこと、ヴォーカル・グループとして「楽曲オリエンテッド」な人気も高く幅広い年齢層からの支持を集める。04年3月にブライアンが脱退するが、この11月に、4人になった(オリジナルの)メンバー構成でニュー・アルバムをリリースする。



☆about BRIAN MCFADDEN(ブライアン・マクファーデン)

1980年4月12日、アイルランドはダブリン生まれの24歳。WESTLIFE結成時よりのオリジナルメンバーで、19歳の時にデビューを果たす。今年3月にバンドの脱退を発表したのち、SONY MUSICと契約、ロビー・ウィリアムスのソロ・ワークスやオアシスのサウンドを支えたスタッフと共にニュー・アルバムを制作。音楽活動休止(グループ脱退)の理由をストレートに歌詞にしたセンセーショナルなソロ・デビュー・シングル「REAL TO ME」はUKシングル・チャート初登場1位を獲得。バンドとして、そしてソロとして、2つのデビュー・シングルでNO.1獲得という快挙を成し遂げた。