オフィシャル・インタビュー到着!
ミュージカル俳優として、またドラマや映画でも活躍する城田優の、ひとりの歌い手としての力量を詰めこんだ、魅力あふれるアルバムが完成した。ミュージカルの名曲を中心に、英語、日本語、スペイン語という3つの言語で流麗に歌いあげ、豪華なゲストたちとのデュエットが熱量を高めている。洗練されたアレンジは、オーケストラ、ジャズ、ロック、ラテンのビートも、甘美で伸びのある歌声とよく相まって心地よい。歌詞を大切に読み込んで、その主人公となって歌うというひたむきな姿勢を、16歳の時からミュージカルの舞台に立って培ってきた。だからどんな音楽のジャンルも、言葉の国境も超えて、歌を聴く人の心に響かせることができる。そういう意味での『a singer』というアルバムタイトルだろう。もちろん“a singer”ひとりの歌い手としての新たなるスタートでもある。
ーーミュージカルというワクにおさまらない、素敵なアルバムです。どんな人に聞いていただきたいですか?
ミュージカルの好きな人たちはもちろんですが、本当に名曲ぞろいだし、すごく豪華なゲストなので、同時にミュージカルに興味のない人たちにも聞いてもらえたら嬉しいですね。たとえば映画『グレイテスト・ショーマン』を観てハマった人なら、あの曲を歌ってるんだ、じゃ城田の歌も聴いてみようとか。私は『アラジン』が好きなんだけど、え、すみれと歌ってるの? 歌うまいの? すご~い、この2人ありえなくねって(笑)。城田優が歌えるっていうことを知らない人たちにまで、そんなふうに口コミで『a singer』ちょっと1回聴いてみてっていう現象が起こったら、すごくスタッフは喜ぶと思います(笑)。
ーー朝、起きた時や、夜、寝る前に聴きたいと思いました。朝ならエモーショナルな一日になり、夜なら穏やかな眠りが訪れると思うので。
ありがとうございます。今回は自分の力というより、プロデューサー、ディレクター、ミュージシャンとたくさんの方たちの力を借りて、みなさんのセンスに託す形を取らせていただきました。そのうえで僕自身は、歌うことを最大限にやらせていただいた。僕が思う城田優なりの最大限のファントム、最大限のロミオ、最大限のルドルフ、最大限のピピン、最大限の『グレイテスト・ショーマン』の歌ですね。いま自分のできるベストの歌唱であり、ベストの表現だと思います。
ーーゲストの方たちも豪華です、ご紹介していただけますか。
まず、ラミン・カリムルーさんは、本当に唯一無二の声を持った、ブロードウェイでもウエストエンドでも活躍している、世界的にトップレベルのミュージカル俳優です。そんな彼が日本でいちばん人気があるといっても過言はでない『エリザベート』というミュージカルの中でも、いちばん人気のある『闇が広がる』という曲のトートを日本語で演じてくれるって、奇跡みたいなことだと思います。
ーー信頼があるんですね。デュエットも、すごくおもしろいです。
2013年と2017年にも、世界的なミュージカルのトップのシンガーを集めた舞台『4Stars』で共演させていただきました。それ以来ずっと仲良くさせていただき、今回は本人に直接連絡して、今度CD作るんだけど、ラミンもよかったらやってくれないってお願いしたら「絶対ユウとやりたい!」と。
ーー日本語の指導はしましたか?
もちろん、ラミンは日本語をほぼしゃべったことがないので、微調整は現場で何度も。細かくやりすぎると、いいところが全部消えちゃうので、個性は生かしつつ。でも日本語でもラミンらしさが素晴らしく、ロックの曲調も彼の声に合っているし、僕らの声の相性も非常にいいので、いいナンバーになったなと思います。
ーーすみれさんは?
すみれとは8年前ぐらいに知り合って、はじめて会ったときにカラオケに行って、すっごく歌うまいなと思った。彼女、ミュージカルが好きで日本でも出演されているんですけど、そういうイメージはあまり無いと思うんですね。でも『アラジン』を英語でフェイクが入ったソウルの歌い方でできる人って、すみれだけだなって思っていた。これも僕が連絡をして「すみれー、今度こういうのやるんだけど?」「やりたーい!」ということで実現しました(笑)。
ーー男前の歌い方ですよね。
そこがまたいい。女性らしいジャスミン感とは違うかもしれないけど、逆にすごいカッコイイ歌い方をしてますね。
ーー生田絵梨花さん。
生田さんに関しては、公演でご一緒したことはないんですけど、音楽番組の歌謡祭とか、舞台の裏側では会ってるんです。僕は『ロミオとジュリエット』の初演と、再演をやらせていただいて、僕がロミオ役を引退したあとに、彼女はジュリエット役で入ってきたミュージカル女優さんですが、いま日本のミュージカル界を担う立場で、これからももうどんどんうまくなっていくでしょう。通る声はジュリエットにぴったりだなって思ったので、今回一緒に歌っていただいて、すごくいいデュエットになりました。“ロミジュリ“のミュージカルが好きな人たちにとっては、ここでしか聴けない、新旧のロミジュリコンビです(笑)。
ーーすみれさん、生田さんに限らず、女性とデュエットする時って優しいですね。本質的に女性に対してエスコートする気持ちを持っている人なんだろうなと。
あはは。基本的にLove & Peaceが僕のモットーなので、女性に限らず男性でも優しくしますよ。僕もヨーロッパ人の面があり、レディファーストで生きてますし、女性に対して優しくっていうのはもちろん心がけていることではあります。
ーー英語、日本語、スペイン語で歌うときに、性格は変わりますか?
やっぱり声が変わりますよね、だから歌っても変わる。それは自然と、普通に変わるんです、意識はまったくしていないです。言葉としては、スペイン語はどんどん前に進むし、英語もカッカッと行くけど、日本語はまあるいというか、ふわっとする。
ーー1枚のアルバムで、3カ国の歌が聴けるって新鮮でした。
そこも楽しんでもらえれば。どの言語も、発音はほぼ100%完璧です。とくに英語に関しては、こてんぱんに指導していただいた(笑)。
ーー歌うんだったら、発音まですべて完璧にやりたいと。
もう今回のテーマでした。英語でやる理由は、海外にいる人たちや、日本語じゃない言葉で生活してる人たちにもこれらの歌を届けたい。今の時代ってインターナショナルでグローバルというか、国境がないじゃないですか。この『イザベル』が、スペインや南米で大ヒットする可能性だってある。英語圏で『A Whole New World』が、このバージョンすげえいいぜって思われるかもしれない。世界を視野に歌ってるというのはあります。
ーーactorとして歌うことと、singerとして歌うことは違いますか?
その質問に対して答えると、矛盾するんですけど。なぜならアルバムタイトルは『a singer』だから。今回は、ミュージカルの中の曲を多く歌ってるんで、僕としてはsingerではなく、actorとして、役として歌ってることが多いんです。『ファントム』で「♪母は闇で僕を産んだ~」と歌うのは、actorですね。でも『イザベル』は、誰かの役になってなくて、そこはsingerです。城田優として自分が歌いたいものを、自分のクセというか感覚で歌ってる。じゃ、なんでアルバムは『a singer』っていうタイトルなのっていうと、上の人たちに聞いてください(笑)。
ーーそれは城田さんのsingerとしての力量と、これからの可能性の大きさに対して付けたのだなと理解しています。singerとして、新たなるスタートでもある。
それなら、ありがとうございます(笑)。
ーー最初のミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の舞台に立ってから、16年が経ちました。その後の長い努力があるからこそ、このアルバムができたのだと思いますか?
そうですね。16歳で最初に『セーラームーン』に出させていただいた時は本当に過酷でした。歌も芝居も殺陣も何もかも初めての経験で、稽古の帰りにファミレスでごはんも喉を通らなかった。その後『テニスの王子様』と『スウィーニー・トッド』、『エリザベート』、『ファントム』、『ブロードウェイと銃弾』とステップ・アップしていった。賞もいくつもいただけて、主演のプレッシャーもあった。いつも作品に対して、できる最大限の力を発揮して取り組んできた。そうやってミュージカル俳優としての時間を重ねる中で得られた表現力を、このアルバムに全部入れました。
ーーこれからも何枚もアルバムをリリースしてほしいのですが。
だいじょーぶ、まだまだ欲張りです(笑)。次は自分でセレクトした、日本語と海外の曲のカバーをやりたいんです。ポップスやR&Bも好きなんです。実際、過去に一度やらせていただいたのだけど、あんまりうまいこといかなかった。じゃ、聴きたいって思わせるためにはどうしたらいいか。自分が確立したミュージカルというジャンルで、いまの自分ができる最大限を、1枚のミュージカル・アルバムにしようと。それで城田くん歌うまいじゃんって広がった時に、やりたい音楽をさらにやることができるだろう。最終的には自分が作ったオリジナル曲を、これどうですかって提示したい。そういうけっこう深い思いをつめこんでできたのが『a singer』です。
ーー最後に、このアルバムを聴いてくださる方たちにひとこと!
ミュージカルファンの方たちは、1曲でいろんなミュージカルを表現してることを感じてくださると嬉しいです。ミュージカル観たことがない方たちには、このアルバムの中に1曲でも刺さる曲があって、ぜひ一つでも「コレ観たい!」って、ミュージカルに興味を持っていただけたら嬉しいです。
■城田優本人による『a singer』アルバム全曲解説
■コーナー・オブ・ザ・スカイ(ピピン)
自分さがしの旅に出る男の子の話なんです。僕は自分にふさわしい場所を探すんだっていう歌なので、路頭に迷ったときに聴いてほしいですし、聞いてポジティブになってほしいですね。2019年の日本公演で僕はピピンを演じますが、エンターテイメントの要素が大きい普及の名作なので、ミュージカルをはじめて観る人にもおすすめです。
■ホール・ニュー・ワールド(アラジン)duet with すみれ
どうしても英語で歌いたかった曲です。すみれのソウルフルな歌唱力と、ちょっと感情が揺さぶられるような2人のぶつかるパワーを聴いてもらいたいです。後半になるにつれてどんどんパッションが上がっていくのが、この曲の聴きどころ。すみれの歌い方はとにかくカッコいいですよ。
■闇が広がる(エリザベート)duet with ラミン・カリムルー
僕がルドルフをやっているのがポイントです。僕は、トート役は百何十回やってますけど、ルドルフは舞台上では一度も歌ってないので、ここでしか聴けない。なによりもラミンの素敵な日本語の歌に注目してください。僕との波長と声が合うので、サビの張るところのハーモニーはお気に入りです。
■僕がついてる(スウィーニー・トッド)
出演している作品の中で、僕が歌っていない曲をあえて選びました。それはこの曲がこのミュージカルの救いというか、すごくせつなくて、でも愛おしい曲だから。ピュアな心をもった青年が、ひとりの女性を守りたいがゆえに歌う、すごくまっすぐな歌です。僕は、トビーの心情になって歌いました。
■マイ・フェイヴァリット・シングス(サウンド・オブ・ミュージック)
もう、ミュージカルの代名詞といってもいいぐらい有名な曲です。このアルバムの中ではいちばんアレンジが異質というか、他の曲に比べてまったく違うジャジーな方向から攻めていて、それがすごくオシャレに出ていて、カッコイイなって僕自身思います。
■エメ(ロミオとジュリエット)duet with 生田絵梨花
生田絵梨花さんは、日本のミュージカル界の期待を担う存在で、可能性に満ちています。まっすぐかつ非常に透き通った声を持っています。実際、一緒に歌ってみて、相性もいいと思うし、すごくいいデュエットになったなと。僕と彼女は“ロミジュリ”のミュージカルに出演した時期がズレているので、新旧のロミジュリコンビはここでしか聴けないです。そこは目玉のひとつですね(笑)。
■母は僕を産んだ(ファントム)
このミュージカルの中でいちばん僕が好きな曲で、本当に涙なくして聴けない曲だと思う。歌詞の前半は、ファントムが本を読んでいるんです。それは彼の物語ではないのに、重なるのですごい魅力がある。後半になると私情に移って、クリスティーヌの話になる。アルバムの中でいちばん感情がこもっている、爆発するエネルギーをこめたのがこの曲です。
■僕こそ音楽(モーツァルト)
唯一、僕が参加してないミュージカル作品ですが、この曲自体がすごく好きで思い入れもあります。いちどコンサートで披露させていただいた時も、非常に評価が高かった。“僕こそ音楽だ”って思ってるわけではないけれど、チョー共感できるし、ひとつになれるところがある。そこはぜひ聴いてほしいです。もし僕が演じたらこうなりますって、モーツァルトとして歌ってます。
■ザ・グレイテストショー(グレイテスト・ショーマン)
さあいくぜ、サーカスの始まり!っていう、エンターテイメントソングです。映画『グレイテスト・ショーマン』の幕開けを城田優バージョンとして、シンプルに再現をしたつもりです。♪オオオオ~っていうところから、その再現率の高さを、僕の声で楽しんでいただければと思います。
■ア・ミリオン・ドリームズ(グレイテスト・ショーマン)
僕がほぼ歌っているんですけど、後半だけ女性パートの部分を友人のエリアンナにやっていただいた。高校の同級生で、ミュージカル女優としても非常に活躍している人です。もうここは1つの見せ場で、曲の最後のハーモニーは相当気持ちいいと思う。この曲自体がメッセージが強いので、歌詞もぜひ和訳を調べてもらって、夢を追いかけてる時とか、やりたことに夢中になってる時に聴いて、頑張ろうって思ってもらえれば嬉しいですね。
■イザベル
スペイン語の曲は、自分のアイデンティティーの半分だから、絶対に入れたいと思っていました。だったらこの曲だなって。イル・ディーヴォのはクラシックだし壮大な感じだけど、僕は、「あ、これテンポあげたらカッコ良くなるんじゃないかな」と。いま中南米で流行ってるラテンのリズム満載な曲調を取り入れてもらったら、すごいハマった。「よっしゃあ!」と思った瞬間ですね(笑)。城田優のアイデンティティーとして聴いてください。ドライブにもおすすめです。
(インタビュアー:高山まゆみ)