テオドール・クルレンツィス

 テオドール・クルレンツィスは現在、ペルミ国立オペラ・バレエ劇場の芸術監督、アンサンブル・ムジカエテルナおよびムジカエテルナ室内合唱団の芸術監督を務める。ムジカエテルナのアンサンブルと合唱団は、ともにクルレンツィスがノヴォシビルスク国立歌劇場と同管弦楽団の音楽監督(2004~2010)を務めていた2004年に創設された。

 現在はペルミのレジデント・アンサンブルとなっているムジカエテルナは、ペルミ国立オペラ・バレエ劇場の第1オーケストラの地位にある。ムジカエテルナはクルレンツィスとともに2012年にソニー・クラシカルと専属契約を結び、モーツァルトのダ・ポンテ台本によるオペラ三部作を録音中で、「フィガロの結婚」と「コジ・ファン・トゥッテ」がすでに発売され、「ドン・ジョヴァンニ」が発売を待っている。クルレンツィスとムジカエテルナは、さらにラモーの作品集「輝きの音」、ストラヴィンスキー「春の祭典」、「結婚」、パトリツィア・コパチンスカヤとのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」を発売している。またマドリードのレアル劇場でピーター・セラーズの演出・翻案で上演されたパーセル「インドの女王」はDVDおよびブルーレイで発売されている。
 クルレンツィスのこれまでの録音には、ノヴォシビルスク時代のムジカエテルナとのショスタコーヴィチの交響曲第14番、モーツァルトの《レクイエム》とパーセルの《ディドとエネアス》(以上、Alphaレーベル)があり、さらにアレクサンドル・メルニコフ、マーラー室内管弦楽団と共演したショスタコーヴィチのピアノ協奏曲集(Harmonia Mundiレーベル)がある。

 ペルミおよびムジカエテルナでの活動以外に、クルレンツィスはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とザルツブルクのモーツァルト週間で共演したほか、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、マーラー室内管弦楽団と再び共演してオランダにコンサート・ツアーを行った。オペラ指揮者としては、チューリヒ歌劇場にショスタコーヴィチの《ムツェンスク郡のマクベス夫人》で、ロイヤル・オペラ・ハウス(コヴェント・ガーデン)にはプッチーニの《トスカ》で初登場した。クルレンツィスはマドリードのレアル劇場と長年にわたる関係を保っており、毎年演奏している。オペラ指揮者クルレンツィスの今後の企画としては、ヴェルディ《レクイエム》の舞台版、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》、ヴェルディの《ドン・カルロ》などがある。

 この数年のクルレンツィスの活動から目立つところを挙げてみると、2008年にはパリ・オペラ座に初登場して成功を収め、それをきっかけに翌2009年にもパリ・オペラ座に戻ってドミトリー・チェルニアコフ演出のヴェルディ《マクベス》で高い評価を受けた。またバーデン・バーデン国際音楽祭では新演出によるビゼーの《カルメン》でバルタザール・ノイマン合唱団・管弦楽団を指揮し、ブレゲンツ音楽祭ではウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してヴァインベルクの《旅行者》を演奏し、ボリショイ劇場にベルクの《ヴォツェック》の新演出版で初登場した。2010年秋には再びボリショイ劇場でモーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》を初演し、2010/2011年シーズンを通して両オペラの再演を行った。

 2006年、クルレンツィスは古楽の知識と情熱に現代音楽作曲家を組み合わせて、モスクワで年に一度開かれる「テリトリア現代芸術フェスティヴァル」を創設、たちまちのうちにモスクワで最も権威があると同時に最も進歩的な音楽祭となった。

 クルレンツィスはロシアの権威ある演劇賞「黄金のマスク演劇賞」を2回受賞している。最初は「プロコフィエフの音楽の見事な演奏」(2007年の《シンデレラ》)を、2回目は「オーセンティックな演奏の分野における抜群の成果」(2008年の《フィガロの結婚》)を評価された。

 ギリシャに生まれたテオドール・クルレンツィスにとって、サンクト・ペテルブルク音楽院で指揮法を学び始めた1990年代はじめ以来、ロシアが第二の故郷となっている。サンクト・ペテルブルク音楽院では、オデュッセウス・ディミトリアディス、ヴァレリー・ゲルギエフ、セミヨン・ビシュコフなどの有名指揮者を育てたイリヤ・ムーシンの薫陶を受けた。

 (ソニー・クラシカル資料より)