マット・ダスク
マット・ダスクはトロント生まれの28歳、若きクルーナーである。2004年アルバム「トゥー・ショッツ」でメジャー・デビュー。

メジャー2作目にして日本デビュー盤となるのが本作「バック・イン・タウン」。アレンジャーにはパトリック・ウィリアムスやサミー・ネスティコ、ヴィンス・メンドゥーサといった錚々たる顔ぶれがその名を連ね、レコーディングはグラミー賞受賞エンジニアである重鎮、アル・シュミット。そのアル・シュミットと共にミキシングを手掛けたのはマドンナからグリーン・デイまで、世界のポップス・シーンにその名を轟かすNo.1エンジニア、クリス・ロード・アルジ。バックを彩るビッグ・バンドのメンバーはゲイリー・フォスター(as)、ウェイン・バージェロン(tp)、チャーリー・ローパー(tb)というド強力なリード・ラインを軸に、ピート・クリストリーブ(ts)、ボブ・シェパード(ts)、ウォーレン・ルーニング(tp)、ゲイリー・グラント(tp)といったファースト・コールのミュージシャンがずらりと並び、更にはリズム・セクションの要にヴィニー・カリウタ(ds)という超豪華布陣。

アメリカン・ソング・ブックというべきスタンダード曲とオリジナル曲がバランス良く並ぶ本作、そのオープニングを飾るのが最高に粋でいなせなタイトル曲『バック・イン・タウン』。そしてタイトル曲に勝るとも劣らぬ圧倒的存在感を示す2曲目『オール・アバウト・ミー』。この2曲はクリス・ロード・アルジがミキシングを担当。マット曰く、「最初にミックスされた音を聴いた瞬間にぶっ飛んだよ!」。問答無用の強力チューン2連発である!続く『ザ・ベスト・イズ・イエット・トゥ・カム』、『時の過ぎゆくまま』、『ラーニン・ザ・ブルース』の3曲はシナトラを彷彿させる楽曲群だが、ここでのマットは見事に新しい歌として甦らせることに成功している。「確かに僕はシナトラのファンであって、彼から多くを学んだことを否定しない。でも、これらのアメリカン・スタンダードを僕が歌うからには、彼とは違う自分自身の“証”を付けたかったんだ」とマットは語る。アレンジャーはいずれもサミー・ネスティコ。ビッグ・バンド+弦楽オーケストラという豪華布陣によるネスティコ・サウンドに乗ったマットの歌。これに酔いしれずして何に酔いしれようか。

いやはやすぐに紙面が尽きてしまうほどの傑作!あとはご自身の耳で確かめて頂きたい!

いま、若きクルーナー達が元気だ。「僕たちはみんなそれぞれのやり方で新しい時代の男性ジャズ・ヴォーカルを創ろうとしている。僕はジャズをメイン・ストリームのひとつにしていきたい。でもね、それ以上にいつも心から願っていることがある。それは僕が歌うことで人々にエンターテイメントを与えたいということなんだ」。本作「バック・イン・タウン」、そんなマットの熱き思いに一点の曇りもないことを雄弁に物語って余りある。