音楽評論家、大鷹俊一のジミ・ヘンドリックス 短期連載コラム(最終回)が到着!
1968年10月16日発売、全米アルバム・チャート1位を獲得したザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの3枚目のアルバムにして、生前発表されたジミ最後のスタジオ・アルバム『エレクトリック・レディランド』の誕生から半世紀。
リマスタリングが施されたオリジナル・アルバム、未発表デモ、アウトテイク、ライヴ音源などを加えた3枚組CDに、長編ドキュメンタリー、ハイレゾ音源を収録したBlu-ray1枚を加えた、計4枚組仕様の『エレクトリック・レディランド 50周年記念盤』は現在発売中。
(http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/499023)
これまでにジミ・ヘンドリックスの日本盤CDライナーノーツを数多く手掛け、著書『定本 ジミ・ヘンドリックス ―その生涯と作品―』(ミュージック・マガジン)を執筆した、音楽評論家、大鷹俊一氏による『エレクトリック・レディランド50周年記念盤』の魅力に迫る、短期連載コラム第4回(最終回):“ジミがかけた新たな魔法”が到着。
第4回(最終回)『ジミがかけた新たな魔法』
『エレクトリック・レディランド 50周年記念盤』の目玉の一つがDISC4のBlu-rayだ。テレビ・シリーズ<クラシック・アルバム>で作られた『アット・ラスト・・・ザ・ビギニング:ザ・メイキング・オブ・エレクトリック・レディランド』は、改めて言うまでもない古典&定番の必見映像(今回は86分のデラックス・ヴァージョン)。オリジナル・マスター・テープを駆使してエディ・クレイマーがサウンド作りを楽しそうに解説する姿に始まり、チャス・チャンドラーやミッチ・ミッチェル、ノエル・レディング等々、鬼籍に入ってしまった人たちの生々しい話など、何度見ても新発見がある。
※DISC4 『At Last…The Beginning: The Making of Electric Ladyland』
そんな本ディスクのハイライトは、3種のハイレゾ音源だ。[非圧縮LPCMステレオ 96kHz/24bit]、[非圧縮 LPCM 5.1サラウンド 96kHz/24bit]、[DTS-HD マスターオーディオ 5.1 サラウンド96kHz/24bit]で、とくにエディ・クレイマーが手がけた5.1chには待望感もあったし、期待値も思いっきり高かったのだが、それをはるかに越えたレベルでの拡大していく音世界に、改めて圧倒された。まさにジミ新体験だ。
前作『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』あたりから顕著なようにスタジオでの実験に激しい意欲と情熱を傾けてきたジミは、ニューヨークの最新スタジオでさらにそののめり込み方が激しくなり、多数のアイデアやプレイが膨大なテープに残されることになったわけだが、そのとき一緒に作業していたジミとエディの脳裏に浮かんでいたのは、こうした音だったという。
エディはブックレットの中で「『エレクトリック・レディランド』を5.1サラウンド・サウンドでミックスするのは、長年の夢だった。ジミと私が1968年にやろうとした冒険的試みにぴったりのサウンドだという気がしていたからだ。(中略)今回の5.1サラウンド・ミックスにジミが手を貸してくれたのは間違いない。心からそう思う。“ジミはこうしたいと思うか?”と常に自問しながら作業を進めた。(中略)<ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)>の最初のサラウンド・ミックスを完成させたとき、心の底から興奮がわき上がってくるのが手に取るようにわかった。それは文字通り、圧倒的なエクスペリエンス(経験)だった」とコメントしている。
<ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)>をサラウンドの基準にしていったそうだが、それはまさにジミとエディがスタジオで、当時の機材やテクノロジーでは不可能なサウンドを求めていた光景が現実化した瞬間であったわけだが、それは実際に体験するとよくわかる。宇宙的なスケールで自らの中で鳴っている音を発信したいと願い続けていた50年前のジミの願いは、技術が切り開いたフィールドによって新たな生命を得ているわけだ。
またステレオ音源にしても、非圧縮(uncompressed)と強く謳っているとおり、各楽器の抜け感が非常によく、まさにスタジオでジミたちがプレイした感触が身近に迫ってくる。
オリジナルの『エレクトリック・レディランド』は、ジャケットも本コラムの最初に書いたようにアーティストの意向を無視したものだったが、サウンドもジミとエディによるファイナル・ミックスまでは完璧だったが、マスタリングとプレスの段階で台無しにされたとかつては言っていた。当時の再生環境の中で起こったことで、それはCD化などの段階で解消されていったわけだが、今回のハイレゾによって、また一つレベルが上がり、より深い領域での楽しみが広がった。
スタジオの生々しい音を聴いていると、ホントに新作がいつか聴けそうな気さえしてくるのが不思議な感触だが、それはジミ・ヘンドリックスがかけた新しいマジックなのかもしれない。
大鷹俊一
※Cal Bernstein_ (c) Authentic Hendrix, LLC
大鷹俊一(おおたか としかず)
音楽評論家。北海道、小樽市生まれ。
ニューミュージック・マガジン社に勤務後、フリー。ブリティッシュ・ロック全般、パンク/ニュー・ウェイヴ以降の米英ロックを中心に各種媒体に書き続けている。
主な著作は『レコード・コレクター紳士録』(ミュージック・マガジン)、『定本 ジミ・ヘンドリックス ―その生涯と作品―』(ミュージック・マガジン)、『ブリティッシュ・ロックの名盤100』(リットー・ミュージックなど。また監修本多数。
過去の音楽評論家、大鷹俊一のジミ・ヘンドリックス 短期連載コラムはコチラ
短期連載コラム(第1回)http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/500954
短期連載コラム(第2回)http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/501106
短期連載コラム(第3回)http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/501300
|商品情報|
The Jimi Hendrix Experience / ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
Electric Ladyland - 50th Anniversary Deluxe Edition / エレクトリック・レディランド 50周年記念盤
品番:SICP-5917~5920
価格:¥11,000+税
仕様:完全生産限定盤 / 直輸入パッケージ仕様 / 3CD+Blu-ray / 48豪華カラーブックレット
解説:大鷹俊一 英文解説:デヴィッド・フリック、ジョン・マクダーモット、エディ・クレイマー / 翻訳・歌詞・対訳付
発売日:2018年11月21日(海外:2018年11月9日)
収録曲
<CD-Disc1>Electric Ladyland
1. ...And the Gods Made Love
2. Have You Ever Been (To Electric Ladyland)
3. Crosstown Traffic
4. Voodoo Chile
5. Little Miss Strange
6. Long Hot Summer Night
7. Come On (Let the Good Times Roll)
8. Gypsy Eyes
9. Burning of the Midnight Lamp
10.Rainy Day, Dream Away
11.1983...(A Merman I Should Turn to Be)
12.Moon, Turn the Tides...Gently Gently Away
13.Still Raining, Still Dreaming
14.House Burning Down
15.All Along the Watchtower
16.Voodoo Child (Slight Return)
<CD-Disc2>At Last...The Beginning: The Making of Electric Ladyland: The Early Takes
1. 1983...(A Merman I Should Turn to Be)
2. Angel
3. Cherokee Mist
4. Hear My Train a Comin'
5. Voodoo Chile
6. Gypsy Eyes
7. Somewhere
8. Long Hot Summer Night (Demo 1)
9. Long Hot Summer Night (Demo 3)
10.Long Hot Summer Night (Demo 4)
11.Snowballs at My Window
12.My Friend
13.At Last...The Beginning
14.Angel Caterina
15.Little Miss Strange
16.Long Hot Summer Night (Take 1)
17.Long Hot Summer Night (Take 14)
18.Rainy Day,Dream Away
19.Rainy Day Shuffle
20.1983...(A Merman I Should Turn to Be)
<CD-Disc3>Jimi Hendrix Experience: Live At The Hollywood Bowl Sept. 14, 1968
1. Introduction
2. Are You Experienced?
3. Voodoo Child (Slight Return)
4. Red House
5. Foxey Lady
6. Fire
7. Hey Joe
8. Sunshine of Your Love
9. I Don't Live Today
10.Little Wing
11.Star Spangled Banner
12.Purple Haze
<Blu-ray>
・長編ドキュメンタリー 『At Last…The Beginning: The Making of Electric Ladyland』(日本語字幕付)
・アルバム『エレクトリック・レディランド』の●[Uncompressed LPCM Stereo 24b/96k]、●[Uncompressed LPCM 5.1 Surround 24b/96k]、●[DTS-HD Master Audio 5.1 Surround 24b/96k]を収録。
|関連リンク|
海外アーティストページ: http://www.jimihendrix.com/
過去の音楽評論家、大鷹俊一のジミ・ヘンドリックス 短期連載コラム
短期連載コラム(第1回)http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/500954
短期連載コラム(第2回)http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/501106
短期連載コラム(第3回)http://www.sonymusic.co.jp/artist/jimihendrix/info/501300