東京・春・音楽祭で来日するイゴール・レヴィット、ベートーヴェン生誕250年を記念し、ピアノ・ソナタ32曲の全曲録音を2019年秋にリリース。
今週東京・春・音楽祭に初登場し、変奏曲だけで組まれた意欲的なプログラムで2回のリサイタルを行う、ロシア・ニジニーノヴゴロド出身のピアニスト、イゴール・レヴィット。昨日ハンブルクのエルプフィルハーモニーにおいて、レヴィットと彼が専属契約を結ぶソニー・クラシカルは、2019年9月に「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」のアルバムをリリースすることを発表した。
今や同世代の中で抜きんでた存在感を誇るレヴィットは、2018年に米国の権威あるギルモア賞や英国ロイヤル・フィルハーモニック協会の「インストルメンタリスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞しているが、まだ数は少ないものの極めて個性的かつ充実したアルバムを発表していることでも知られている。何せ2013年のデビュー盤がベートーヴェンの後期ソナタ集の2枚組で、2014年にバッハのパルティータ集全曲2枚組、さらに2015年にはバッハ「ゴールドベルク変奏曲」、ベートーヴェン「ディアベリ変奏曲」、ジェフスキ「不屈の民の変奏曲」という3曲の大作変奏曲を収めた3枚組をリリースし、これは英国の歴史あるクラシック音楽誌『グラモフォン』の「レコーディング・オブ・ザ・イヤー」を受賞しているほどだ。2018年に発売された「ライフ」はバッハからビル・エヴァンスまでのさまざまな作品を集めた2枚組だが、親友の死という衝撃を録音に昇華させた極めてパーソナルなアルバムでもある。
そんなレヴィットが、待ち望まれていたベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲のセッション録音を完成させ、その成果が今年9月、「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」として発売される。この全集はソニー・クラシカルにとって、2020年のベートーヴェン生誕250年記念イヤーに向けての最も重要なリリースの一つと位置付けられている。
レヴィットはこの大規模な録音プロジェクトについて、このように語っている:「この全集は、私の過去15年間の演奏活動の一つの集大成となるものです。17歳の時、ディアベリ変奏曲と文字通り人生を変える出会いを果たし、作品に対しての驚きと畏敬の念を今も持ち続けている私にとって、ベートーヴェンのピアノ・ソナタと日々向き合い、個人としてのベートーヴェンと触れ合い、それらを私や、私が住む世界と関連付けていくこと―――こうした行為の全てが、この全集録音に結実しているのです。2013年に後期5曲のソナタで録音を開始し、今年ようやく終わりました。私は今、この上ない幸福感を噛みしめていると同時に、これが新たな始まりであることも自覚しています。
ソニー・クラシカルの取締役であるペア・ハウバーは、このように述べている:「イゴール・レヴィットのアルバムはどれもがいわば事件なのです。今回のソナタ全集のリリースは、ベートーヴェンの生誕250周年の先駆けであり、この人類にとって最も重要な芸術家を寿ぐ地球規模のフェスティヴァルの始まりを高らかに告げるものです。イゴールとともにこの全曲録音完成に至るまでの長く、しかし素晴らしい道程を一緒に体験できたことは、われわれソニー・クラシカルの全スタッフにとって忘れ難い経験となっています。」
レヴィットは、全集のリリースに合わせ、ハンブルクやルツェルンをはじめとする世界の主要都市でベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を行うことが決まっている。世界各地でこれほど引っ張りだこのレヴィットに身近で接することのできる東京・春・音楽祭の2回のリサイタルも聴き逃せない。
◎リリース情報
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
イゴール・レヴィット(ピアノ)
CD9枚もしくは10枚組
国内盤発売日:2019年9月18日(予定)
価格・品番未定
◎来日情報
東京・春・音楽祭 イゴール・レヴィット ~THE VARIATIONS
Ⅰ.2019年4月11日[木] 19時00分 開演(18時30分 開場)東京文化会館 小ホール
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_6070.html
Ⅱ.2019年4月13日[土] 14時00分 開演(13時30分 開場)東京文化会館 小ホール
ベートーヴェン:ディアベリのワルツによる33の変奏曲ハ長調 op.120
ジェフスキ:《不屈の民》変奏曲
http://www.tokyo-harusai.com/program/page_6071.html
◎参考動画
・アルバム「ライフ」トレーラー
https://www.youtube.com/watch?v=jPJ3eAosMqU
・バッハ「ゴールドベルク変奏曲」アリア