過去数年の間に、デヴィッド・クックは歓喜の絶頂と悲嘆のどん底を味わってきた。この短期間に、弱冠28歳のシンガー・ソングライターは、全米屈指の人気番組『アメリカン・アイドル』シーズン7で優勝し、ビルボード・デジタル・ソング・チャートに14曲を同時に送り込んでチャートの歴史を塗り替え、2008年11月には自身の名を冠したメジャー・デビュー・アルバム『デヴィッド・クック|David Cook』をリリース。ビルボード・アルバム・チャートで初登場3位を記録し、トップ20シングル2曲(「ライト・オン|Light On」「カム・バック・トゥ・ミー|Come Back To Me」)を輩出。200万枚以上のセールスを記録し、プラチナを獲得した。直後から、同アルバムを携え1年に及ぶ「Declaration Tour」をスタート。しかし同年5月、かねてより脳腫瘍で闘病中だった兄アダムが死去。2009年12月、ツアー終了の翌日にクックはニューヨークに飛び、のちにセカンド・アルバムとなる本作『ディス・ラウド・モーニング|This Loud Morning』の制作に取り掛かった。
「ツアーを終えると、それまで対応できずにいた事柄が次々と頭をもたげ始めたんだ。このアルバムを書くことが癒しになった。それは感情の捌け口となって僕を解放してくれた。その成果である『ディス・ラウド・モーニング』は、少しのアップ&ダウン、そして山ほどの誠実さで出来ている」
どこまでも正直でエモーショナルな楽曲の数々は、「聴く人すべてに、この2年間の僕をさらけ出すものだ」とクック。テキサスに生まれ、ミズーリで育った彼は、「多分これまでで最も癒しに満ちたアルバムだ」と語る。曲を書き進めるうちに、あるテーマが浮かんだという。
「朝、目が覚めても何もする気が起きなくて、頭から毛布をかぶり直して明日に持ち越したいと願う、そんな日が何度もあった」
そうした想いが、オープニング曲「サーケイディアン|Circadian」や(本編)エンディング曲「ラピッド・アイ・ムーヴメント|Rapid Eye Movement」を生んだ。アルバム・タイトルは後者の一節“もう一晩だけ静かな夜がほしい / この騒がしい朝が僕をダメにする前に”からとられた。
「誰しも“この世界は騒々しすぎる”と思う瞬間があるだろう。救いは眠りだけ。そんな感情を“眠りの中に生きる”というロマンチックな発想と結びつけたかったんだ。まるで、この世界を意味あるものにする一時停止ボタンが存在するみたいに」
そうしたエンディングに向かって、同じように眠りに救いを求める「サーケイディアン」で幕を開ける本作は、恋愛関係の始まりから終焉までを紡ぎ出す。「ライト・ヒア・ウィズ・ユー|Right Here With You」「フェイド・イントゥ・ミー|Fade Into Me」「テイク・ミー・アズ・アイ・アム」では恋人同士の固い絆を歌い、「グッバイ・トゥ・ザ・ガール|Goodbye To The Girl」や1stシングル「ザ・ラスト・グッバイ|The Last Goodbye」ではその暗転を歌う。この曲は、ワン・リパブリックのライアン・テダーとの共作で、アルバム中最もアップビートな作品だ。
「楽しげなメロディなのに、歌詞をよく聴くと“えっ”と思うような曲が好きなんだ。例えばポリスの『Every Breath You Take』。あの曲はすごくキャッチーだけど、歌詞はどことなくダークだ。聴く人の意表を突きながら、愛される作品が書けたらいいなと思ってる」
つまり、いくつかヘヴィなテーマを扱ってるからと言って、本作『ディス・ラウド・モーニング』が暗いアルバムだということにはならないのだ。
「実際、音楽的にはこれまでのどのアルバムよりアップテンポに仕上がってる」とクック。「前作では、僕のハートの在りかを音楽的に示す基盤が築けたと思う。僕はずっと、圧倒的なコーラスや、聴く人をノックアウトするような曲が好きだった。だから、このアルバムでは、そうした理想を取り入れて膨らませたいと思ったんだ。メリハリを利かせて、ビッグをよりビッグに、スモールをよりスモールに。もっと身近で、だけど壮大。二つの理想の境界をとことん広げたかった」
豊かで揺るぎないロック魂と情熱的なパフォーマンスを詰め込んだ『ディス・ラウド・モーニング』。プロデューサーは、エアロスミスやサンタナ、マッチボックス20らを手がけたマット・サーレティックだ。
「僕一人じゃとても引き出せないものを、マットは引き出してくれた。サウンド、タイミング、動機づけ、そのすべてを彼は正しく把握している。僕が彼から学んだのは、“正しい結果を得るのは必ずしもたやすいことじゃない”ってことだ。僕が持ち込むアイデアを彼が発展させる、その手腕がこのアルバムを完成へと導いてくれたんだ」
シンガー、ソングライター、そしてミュージシャンとしてのクックの成長は、『ディス・ラウド・モーニング』の随所に見て取れる。
「楽曲にとって完璧な“風景”を見つけることができたと思う。どの曲も、それ自身が命を持って息づいている。作品にアプローチするときは、バンドを組む時と同じようにやるんだ。ベストな楽曲とかベストなミュージシャンにはこだわらない。大事なのは、正しい楽曲、正しいミュージシャンだ。僕の目的は、いい作品を作ること。嘘いつわりのない、リアルなテーマを持てたことは何より助けになったよ。このアルバムで、音楽的にも、詞的にも、感情的にも成長できたと感じる。多くの人たちが共感できる何かを打ち出せたと思うんだ」
ミュージシャン、パフォーマーとして10代の頃から活動してきたクック(12歳でギターを始め15歳で最初のバンドを結成)は、『ディス・ラウド・モーニング』でのツアーにも意欲的だ。
「前作では、作曲を始めてアルバムを仕上げるまで4ヵ月半かけた。今回は1年半だ。オーディエンスの前でプレイする準備は出来てるよ。ステージに立って、みんなの反応をじかに見るのが待ちきれない。それがどんなものだろうとね。願わくば、両手を掲げて一緒に歌ってほしいな」