XZIBIT
知り合って7年間、3枚のアルバムの後にはその人について理解できると思うだろう。彼のライムを聴き、彼のフロウにどっぷり漬かり、頭の中を覗いたような気になるだろう。



ところがXzibitに限って、その考えは全く間違っている。なぜなら4枚目のアルバム、「Man VS Machine」(Loud/Columbia)で、このウェスト・コースト・ウォリアーはXzibitのアルバムがどんな音であるべきか、どんな音でありうるか、という先入見をすっかり吹き飛ばしてしまったのだ。リック・ロック、ビンク、ロックワイルダー、エリック・サーモン、DJプレミアそしてエグゼクティブプロデューサーも兼ねたDr.ドレといったヘヴィー級のプロダクションをフィーチャーし、さらにゴールデン・ステート・プロジェクト(別名Ras Kass、SincereとSaafir)、スヌープ・ドッグ、ドレ、ハミルトン、M.O.P.、ネイト・ドッグそしてエミネムがカメオで参加する「Man VS Machine」は数段パワーアップしたXzibitの襲撃である。タフで、スマート、明確、ベースに恵まれ、ファンク化され、完全なハードコアである「Man VS Machine」はXzibitの見せたことのない一面であると同時に彼のキャリアの中で最もホットなアルバムである。



まずタイトルは、Xzibitが何か新しいことをひそかに思いついているというシグナルである。

「「Man VS Machine」というのは、苦闘とは何かを具体化したものだと思う。俺の人生と、業界の俺に対する期待と、俺が何がしたいかということ。「Machine」がぴったりな言葉なのは、アーティストとして、人間として、俺が対抗し、苦闘する全てのものをこの言葉が表象しているから。このアルバムには恐ろしいほどの成長がある。なぜなら成長しないと「Reckless」(2000)の成功で得た勢いを失ってしまう危険がある。それはしたくなかった。だから今回は実験してみた。ソウルの曲もある。オペラを使った曲もある。本当にパーソナルになったんだ。18歳の頃と同じラップなんかやってられないからね。オーディエンスと一緒に成長しようとしているんだ。」



成長と苦闘からうまれた創造性はXzibitがアルバムを「Man」と「Machine」の2つの要素に分けた方法に表れている。「Man」サイドは、ハード・ビートで骨に近い感情をファンに与えている。なぜ自分の内向的な面を見せるのにこれほど時間がかかったのかと、彼に尋ねると、彼は正直に言う:「オーディエンスの注目を得るまで待つことが重要だから。重要なことを言う時に誰も聞いていないことほど最低なことは無い。成功を少し楽しんだあとやっと自分が何を感じるかをファンに見せてあげられるだけのサポートがあると分かった。」



ヴォーカリストのアンソニー・ハミルトンをフィーチャーし、ソウルにどっぷり漬かったトラック「Gambler」(ビンクのプロデュ−ス)や、リック・ロックのプロデュースでアンドレ・ウィルソンをフィーチャーした「Missin’ You」において、Xzibitの成長を聴くことができる。「Missin’ You」はXzibitの母親の死と、彼のしなければならなかった選択についてについて語っている。「母が死んだ時まだ本当に小さくて、これによって自分の人生が破滅してしまうか、より強くなれるかどっちかになると分かった。強くなれて神に感謝してるよ」「Man」サイドのもう一面は粗野な「Release Date」に見ることができる。ロックワイルダーによるプロデュースの「Release Date」はカリフォルニアの刑務所システムの中で5年間の刑期をつとめる男の日々の現実について細かく語る。「Missin’You」と同様「Release Date」は実話に基づいており、10年間刑務所にいるXzibitの兄弟からインスピレーションを得ている。そして「Man」についてもうひとつ、「What A Mess」でXzibitは伝説のDJプレミアとチームを組んでいる。Xzibitのラフで巧妙なライムとプリモのディープなグルーヴの完璧なミックスである「What A Mess」はXzibitの成熟を示すもうひとつの曲である。「この時初めて東海岸まで行って向こうのプロデューサーと仕事したんだ。彼らは俺がやろうとしてることを受け止めてくれて、お互いがお互いを誉めあったりして、すばらしい体験だった。」



「Machine」サイドは「Symphony In X Major」などの曲でその存在をちらつかせる。ドレをフィーチャーしたこのトラックはXzibit曰く「クレイジーなんだ!みんなめちゃくちゃだと思うよ。」同様に狂ってる曲はアップテンポでバウンシーな「Break Yourself」と「Harder」で、ここでは彼のグループ、ゴールデン・ステートに輝かしい出番を与えている。ロスアンゼルスの有名どころから必ず期待できるように、「Harder」はピュアなCaliの混沌である。



LAアンダーグラウンドの名無しのヒーローとしての時期を過ごした後、1995年のLikwitクルー(Tha Liks、DefariとKing Teeを含む暫定的グループ)とのツアーでXzibitは最初のマス・アピールを味わった。その翌年、彼はラウド・レコードと契約し、「At The Speed Of Light」をリリース、そこで初めて彼のアンカットな芸術的才能とマイクのテクニックが一般大衆にお目見えした。98年の2作目のCD「40 Dayz And 40 Nightz」ではシングル「What You See Is What You Get」のビデオがBETの番組「ラップ・シティ」で6週間連続1位になり、過去の記録を破った。Xzibitは次にスヌープ・ドッグの「B Please」に目立ってカメオ参加し、ドレプロデュースのトラックは彼を次のレベルへと持ち上げていった。次のレベルとは「Restless」(2000)である。ドレとの再度の共同プロジェクトでRIAAのプラチナ確実な「Restless」はXzibitのキャリア最高の売り上げを記録し、爆発的なシングル「X」はMTV、とBET両方でメジャーにとりあげられ、彼独特のスラング言語が多くのアーティストの耳にとまり、それがエミネム、デ・ラ・ソウル、フレッド・ダースト、エリック・サーモンやコーンのジョナサン・デイビスといった有名どころとのコラボレーションへと繋がった。



Xzibitはまた自分の技術をステージにも発揮し、かなりの成功をおさめたAnger ManagementツアーやUp In Smokeツアーに参加した。ツアーが終わった後、Xzibitはしばらく息子と一緒に過ごし、目下の仕事に集中し始めた:「Man VS Machine」のレコーディングである。周囲の期待も高まっていたためXzibitは身も心もを次の動きのために調整した。「自分を良くすることに時間を使ったよ。かなりきつくエクササイズもしたし、酒もたばこも抑え目にして25ポンド落とした。まるで(ボクシングの)戦いに挑むようにこのアルバムのために鍛えたんだ。高校以来これほどエネルギーを感じたことはなかったね。気持ちいいよ。」



もしXzibitの気持ちがいいなら、彼の音はもっといい。新たなる決意を武器に、勝ちとった周りからの敬意に支えられ、Xzibitは君の頭を振らせ、体をゆらせるようなパンチを備えてリングに上がる。彼はこの秋Anger Managementツアーの続編にエミネム、パパ・ローチそしてルーダクラスと共に参加する。「Man VS Machine」についてどう思うかを聞かれ、彼は率直に答える。「このアルバムが大好きだ。俺は自分の音楽を真剣に受けとめてる。心にね。」