ソイル
<バイオ>

ソイルは、うわべだけのハード・ロック・ヒーローたちや束の間のニュー・メタル幻想に迎合しているだけなのか?もちろんそんなことはあり得ないし、そしてそれこそがこのシカゴの5人組の最も素晴らしいところであり、輝かせている最大の魅力でもある。フックよりもピアスの穴をあけることに重点を置き、サウンドよりも髪型のほうがうるさい他のバンドたちとは異なり、彼らはもっと伝統的なやり方、すなわちインディ・レーベルからのリリース、多くのライヴ活動、数年間にわたる経験で培ってきたメンバー同士の絆、といったものをベースにしてスキルと今日の地位を築き上げたのだ。



 MIAレコーズからリリースした「El Chupacabra」(1998)や「Throttle Junkies」(1999)といったインディペンデントでの努力が実を結んだのは2001年の秋だ。BMG傘下のメジャー・レーベルであり、カリスマといって良い業界の大物クライヴ・デイヴィス率いるJレコードとの契約を得て、メジャー・デビュー作「スカーズ」をリリース。全米で20万枚を超えるセールスを記録したこのアルバムの成功を受け、2003年にマネージメント契約を結んだ大手マネージメントThe Firmからオファーを受けることになる。そのメジャー・デビュー作からはハード・ロック・アンセム「ヘイロー」を産み落とした。この曲はまずUSラジオ・フォーマットであるActive Rockでブレイク。そこでのブレイクが、その後一年以上に及んだツアー(オジー・オズボーンやロブ・ゾンビ、Mudvayneらとのアリーナでのコンサートから、Static-Xやセヴンダストらと行った大きなクラブでのライヴ、そしてオズフェスト)のきっかけともなっている。 



もちろん、そんなソイルのサウンドに感銘を受けたのはインディ時代からのファンのみならず、時に非常にシニカルな批評を書くUSのプレスたちのリスペクトさえ勝ち取り、ラジオ&レコーズはバンドを「誰もが待ちかねた、ステロイドを注入されたロックの旗手」と評されるに至った。

 デビュー作として「スカーズ」は完全なサクセスを収めたのだが、それはこのバンドにとって単なる始まりにすぎない。この新作「リディファイン」を手にした今、それが事実であることがわかるはずだ。彼らは我々の期待に応えるどころか、さらに超越したアルバムを創りあげているのだから。



「13ヶ月もツアーをやっていたおかげで、自分たちをよく知ることができたんだ」とキングはニュー・アルバムの創作過程について語っている。

「新作にとりかかるときに感じたのは、おれたちが自身のサウンドに忠実なままでいたかったってことだ。だからそのエネルギーと情熱をサウンドに注いだのさ」

 ソイルのそんなエネルギーと情熱は、夏にUSでリリースしたEP「Pride」を通してハード・ロック・コミュニティーに浸透し、秋に行われたStatic X とのツアーはどこもソールド・アウトとなった。そのEPのタイトル・トラックを聴けばわかるように、新作「リディファイン」のギター・サウンドやヴォーカルのフックは最高であり、どんなメタル・バンドよりも内容豊富なメロディであると断言できる。またそれは映画「テキサス・チェーンソー」のサントラや、コンピレーション「MTV2 Headbangers Ball」でも健在だ。さらにリード・シングルでありタイトル・トラックでもある「リディファイン」の有無を言わせぬ激しさは、ライヴでの魅力も存分に引き出している。

「ただクレージーになるよりも聴衆たちの心をわし掴みし、夢中にさせるような楽曲が好きなんだ。でも同時におれたちはメロディも気に入っているんだよ」

 そう語るのはグラスだ。もし「スカーズ」がエンジンを吹かせて速度を上げるモンスター・トラックなら、この新作「リディファイン」はすべてを強引なまでに薙ぎ倒すモンスター・トラックだといえるだろう。

 「リディファイン」と「Pride」のパンク的サウンドは、不気味な楽曲「サムシング・リアル」に出没し、「キャン・ユー・ヒール・ミー」でマッコムが披露しているLayne Staley的ヴォーカルで浮上するアリス・イン・チェインズの要素は、アジテーションとアティトゥードに満たされたスクリームを空高くとどろかせ、「ラヴ・ヘイト・ゲーム」がスピーカーを通して攻撃的に爆発する一方、「クロス・マイ・ハート」はメタリカに匹敵するようなハードかつソリッドなサウンドでファンたちに強烈な一撃を食らわせている。

「自分自身のアイデンティティを持つことはどんなバンドにとっても大切なことさ。“これはどこかで聞いたことがあるな・・・”なんて言われる原因は俺にあるかもしれないな。でも現実逃避をするよりはよっぽどいいだろ」。

ゼイデルは他と比べられることを恐れずにそう語る。なぜならソイルは彼らが受けた影響に誇りを持っているのだ。

「誰だって他人の焼き直しなんてしちゃいけないし、それについて聞かれたときにとぼけたりしてもいけない。おれたちが影響を受けたものはサウンドに現れているけれど、自分たちがやっていることに愛情を持っているし、すべてを一緒にすると何か特別なものを得られるように感じる。メンバーそれぞれが受けてきたいろんな影響が、このバンドの面白みをキープしているんだと思う」

「アルバムの隠れた名曲のひとつは“オブセッション”だ」

 グラスも付け加える。

「そしてその楽曲がおれたちが受けてきた影響の完全な実例ともいえる。それはおれが書いたリフで、突然壮大なエピックの一部として適所に収まったって感じなんだ・・・実にうまく隠されたエピックさ。でもこれはアイアン・メイデンの“Rime of the Ancient Mariner”みたいな12分間のエピックとは全然違うものだよ。おれたちは12分間もの楽曲には注目しないからね」

 彼らがディテールにもこだわりを持っている。「デナイ・ミー」にスパイスを加えている中東的なフレーバーから、「プライド」のようなヴォーカル・ハーモニーの豊富さまで、「リディファイン」はあたかもライヴで聴いているような三次元的な作用を与えている。

「このアルバムでアダムがやったことが、おれはすごく気に入っているんだ」

 とマッコムズは言う。

「レコーディングをしていたとき、おれはインディアナの家にいてバンドはシカゴにいた。おれはいろんな歌詞のアイデアを持っていこうとしていたんだけど、リフが書かれたときにおれはその場所にはいなかったんだ。つまりみんなが手足を築き上げ、おれはそれらの脳みそにアイデアを注ぎ込まなくてはならなかった。このアルバムの楽曲はおれたちの子供みたいなもんだし、特別なものなんだよ」

 彼はメンバーそれぞれの努力を誇りに思いながらも、特定のインスピレーションを歌詞に提示することは気が進まなかったのだという。

「結婚していようが、子供がいようが、どんな仕事をしていようが、試練も苦悩も道徳的ジレンマも直面しなくてはならない問題も誰にだってあるんだ。おれはツアーに出ていても家で家族と一緒にいても、常に新しい体験すべてに目を見開いていた。多くの人々が自分自身の”ヘイロー“を持っている。その楽曲を製作したときのおれの気持ち(おれにとっての”ヘイロー“)なんてどうでもいいことなんだよ」

今このサウンドを前にしているすべてのファン、そしてすべてのファンが持っているそれぞれの「ヘイロー」にとって、ソイルが特別な瞬間をもたらすバンドであることは間違いないはずだ。