マリア・メナ
デビューから3枚目のアルバムをリリースするまで
「最初のアルバム(『Another Phase/アナザー・フェイズ(’02)』)の時、感じていることを伝えたいっていう欲求が凄かった。2枚目のアルバム(『Mellow/メロウ(’04)』)では、ワォ、みんな私を望んでくれてる!どうやったら、みんなを納得させることができるんだろうっていう気分だった。だからその時は、ちょっと保守的になって、色々試した感じだったの。だけど3枚目のアルバム(『Apparently Unaffected/アパレントリー・アンアフェクテッド(’05)』)では周りのことを気にしないでやりたいことをやろうって決めた。一部の人は“彼女はとても若くてスウィートだったのに、どうしちゃったの?”って言うかもしれない。だけど今回は、アーティストとして女性として成長することを選んだの。以前の私は、私のアルバムを買ってくれる大人の人に対して十分な年齢じゃなかったかもしれない。そして多分、とても若い子達に対しては成熟しすぎてるところがあったかもしれないわ。」

カニエ・ウェストを唸らせる
マリア・メナは、彼女よりも倍も年上のノルウェー・アーティストが経験する以上のことを経験済みだ。2枚目のアルバム『Mellow/メロウ』は、母国ノルウェーではゴールドに達成しなかったが、その『Mellow/メロウ』にデビューアルバム『Another Phase/アナザー・フェイズ』から数曲ピックアップし再編集したアルバムを『White Turns Blue/ホワイト・ターンズ・ブルー』として全米でリリースすることになったのだ。『White Turns Blue/ホワイト・ターンズ・ブルー』が発売されるやいなや、大ヒットプロデューサー、カニエ・ウエストは彼女のシングル「You’re The Only One/ユーアー・ジ・オンリー・ワン」を”今年の夏のアンセム”と言い、アメリカでのプロモーションは、デヴィッド・レターマンの人気番組「The Late Show」でパフォーマンスした時、最高潮に達した。母国の近く、デンマークのラジオ局でも「You're The Only One/ユーアー・ジ・オンリー・ワン」はトップに上りつめ、MTVヨーロッパのアップ・ノース・アワードでは<ベスト・ノルウェー・アクト>を受賞した。

『Apparently Unaffected』
高い評価を得た『Apparently Unaffected/アパレントリー・アンアフェクテッド』は、ヨーロッパで大ヒットを記録し、現在も売れ続けている。同アルバムは(今までのところ)、ドイツとオランダでゴールド・ディスク、母国ノルウェーではプラチナ・ディスクを獲得している。「前作は、理想とするアーティスト像へ向けて私が成長するスペースを与えてくれた」と語るマリアは、自身のトレードマークである率直さを更なる高みへと昇華させたことを十分に自覚している。

リリック&メロディー・メイカーとして
最初に歌詞、次にメロディー。マリアは、ずっとこうして音楽を作ってきた。彼女の世界の断片が丁寧に構築される楽曲の数々は、どれもが実体験に基づいている。15歳でデビュー作『Another Phase/アナザー・フェイズ』をリリースして以来、マリアがその率直さで広く知られているのも、実体験に基づいた楽曲を書いているから。その率直さに、『Mellow/メロウ』と『Apparently Unaffected/アパレントリー・アンアフェクテッド』の主要素となった非凡なメロディー感覚が組み合わさり、マリアは世界でも注目を浴びるようになった。マリアの頭の中でメロディーが流れ始めると、これらはプロデューサーに託され、最終的に曲を完成させるのが彼女のスタイル。「私は楽器を弾かないから、私の気持ちになって考え、私のアイディアや思いをさらに一歩先へと進められるプロデューサーに頼っているわ。私との仕事はなかなか大変だと思っているでしょうけれど、それでも一緒にやってきたことを心から誇りに思っているはず。音楽的な進化を自然と成し遂げてきたように思う」とマリアは語る。彼女のソング・ライターとしての成功の鍵は、リスナーが自ずと共感できる彼女のパーソナルなもがきや普遍的な喜びを伝えている点だ。同時に彼女の書く歌詞は現代のポップ・ミュージック・シーンにおいてめずらしく、言葉が成熟していることもあげられる。

飛躍の年
マリアは今春、ドイツのグラミー賞とされるエコー賞の「ベスト・インターナショナル・ニューカマー」にノミネートされたことで、ヨーロッパにおける決定的人気を証明した。前作『Apparently Unaffected/アパレントリー・アンアフェクテッド』は、引き続き世界中のリスナーを魅了し続けている。また、同アルバムからのファースト・シングル“Just Hold Me/ジャスト・ホールド・ミー”のPVは、ユーチューブで1,000万回以上の視聴を記録している。さらに、マリアのブログ(mariablog.com)も大人気だ。普通のアーティストでは公開しないような日常の自分をファンに紹介し、マリアは新境地を開拓した。「私にとって、ブログはファンとコミュニケーションを取る素晴らしい手段なの。私は、自分の紆余曲折を皆と共有するのが好き。それに、私の音楽を買い、楽しんでくれるファンの皆と関係を保つことって、すごく大切なことだと思う」とマリアは言う。
前作のリリース以来、マリアは何百万というテレビ視聴者に向けてパフォーマンスを行い、ヨーロッパの数カ国で熱狂的なファンベースを獲得すると、ツアー・アーティストとしても上々のスタートを切った。「ここ数年の間に、多くのことが変わったわ。昔の私は、ステージに上ることを楽しんでいなかった。寝室で歌っていただけでCDデビューしてしまった私は、きちんと訓練されたヴォーカリストじゃないから、ライヴが好きじゃなかったの。それでも、いつの頃からか、きちんとライヴもやらなくちゃダメって思い始めた。これまでにたくさんのコンサートをしてきたし、コンサートをすることで、素晴らしい人生体験をすることもできたしね」。

ライヴ・ツアーにて
マリアの『Apparently Live Tour/アパレントリー・ライヴ・ツアー』は今春、ブロック・パーティやウィルコといったバンドと共に、ライヴ・エンターテイメント・アウォーズのベスト・クラブ・ツアーにノミネートされた。彼女はノルウェー、オランダ、スイス、オーストリア、ドイツで素晴らしいコンサートを数多くこなし、ハンブルグのライヴ・アースでは世界最高峰のアーティストたちと共演を果たした。「去年の夏に出演したフェスティヴァルで、私の楽屋の両隣がデイヴ・マシューズ・バンドとシザー・シスターズだったの。この時、何か大きなことが起こったんだと気付いたわ。私がパフォーマンスした巨大なテントには、15,000人もの人々が集まり、超満員だった。私は“みんな、会場を間違えたに違いないわ。みんな、他のバンドを観に来たつもりなのよ。私はさっさとステージから退散したほうがいいんだわ”なんて考え続けてた」とマリアは笑いながら語る。自身の気持ちを人々に語りたくて、曲を書き始めたマリア。彼女は今でもデビュー当時のまま、地に足のついた気さくな女性であり続けている。しかし、前作と比べて明らかに変わった点もいくつかある。「私のヴォーカルは成長したわ。自分の声がどんどん力強くなっていくのを見守るのは、面白い経験だった。今では、まったく新しいタイプの曲も歌えるの。このアルバムで、みんなにもヴォーカルの成長ぶりを分かってもらえればいいな」

世界中からの注目
若きシンガー/ソングライターをめぐる事態は、さらなる進展を見せている。最新作『Cause And Effect/コーズ・アンド・エフェクト』(2008年10月発売/日本未発売)は多くの国々でリリースが決定し、世界中で既に注目を浴びている。期待は高まるが、マリアは何の不安も感じていないようだ。「私にとって、このプロセスで唯一重要だったのは、完全に感じられるレコードを作ることだけ。海外で成功し、世界各国で続々とリリースが決まるのはもちろん嬉しいけれど、私にとっては、家族や友達がアルバムをどう思うかが1番重要なの」。23歳のマリアは、人生において大切な教訓を既に学んでいるようだ。「十代の大半を音楽業界で過ごし、私はあることに気づいた。アーティストにとって最終的に重要なのは、自分の才能とソングライティングに対する愛だってことに気づいたの。誰も才能や愛をアーティストから奪うことはできないでしょ」
最新作は、近い将来日本でもリリース予定だが、まずは、彼女の歴史をデビュー作から振り返ろうではないか。日本デビュー・アルバムに選曲された14曲はマリア・メナというパズルを完成させるピースがふんだんにちりばめられている。パズルのピースは、私たちの心に驚くほど自然に入り込んでくることだろう。そして、このスペシャル盤をきっかけに、それぞれのオリジナル・アルバムに戻って聴いていただければ嬉しく思う。
「私はとても恵まれていると思う。私の周りには、一緒に時間を犠牲にしてくれる人や、私を守ってくれる人、私が納得できるものができるまで待ってくれる人たちがいるもの」と彼女は言う。「時々問題を起こすこともあるけどね」と茶目っ気たっぷりにマリアは付け加えた。