インフュージョン
オーストラリアのいくつかのロック・グループは、最近インターナショナルのプレスから「救世主」として迎えられている。流行仕掛人たる雑誌関係者は口々に「エレクトロニック・ミュージックは死に絶え、今は正反対のアーティストたちと共にロックが再び盛り上がりを見せている」とまくしたてている。白熱した議論を繰り広げている物知り顔のメディアたちが提唱しているのは、“すっかり年老いて肥満気味なポーカーフェースのDJたちが平凡に回し続けるビート”であるダンス・ミュージックが、ロック・ルネッサンスのリーダーたちから生み出される激しくリアルなレコーディングや熱狂的なライヴ・パフォーマンスなどと、いったいどうやったら比較などできるのだろうか、ということである。彼らはこう問いかけている。エレクトロ・ミュージックなどというものが、情熱的にスクリームするロックと同じように、エネルギッシュでエキサイティングになりえるというのだろうか、と。

 その答えはインフュージョンに尋ねるべきであろう。オーストラリアのアーティストたちがロックン・ロールの腐敗した死体にまだ息があることを独力で証明してみせたように、インフュージョンはエレクトロの終焉に関するあらゆる議論を消し飛ばすために存在しているのだ。まもなくリリースとなる彼らのセカンド・アルバムに耳を傾けるか、もしくは彼らのダイナミックなライヴを生で体験してみて欲しい。そうすれば“ダンス・ミュージックの死”という記事が、やたらに大げさなものなのだと誰もが同意できるはずだ。

 インフュージョンの素晴らしさを綴ったレビューは決してでたらめなものではない。音楽関係のプレスは、彼ら(Frank Xavier、Manuel Sharrad、Jamie Stevensというメンバー)に惜しみない称賛を与えながらも、果てしない幻想にとりつかれているわけではないのだ。インフュージョンに限っていえば、彼らは誇大表現など必要とはしない。シドニーで最も権威のある新聞、The Sydney Morning Heraldはインフュージョンを「オーストラリアのベスト・ライヴ・アクト」と表現しているし(ベスト・ライヴ“ダンス”アクトではなく、ベスト・ライヴ・アクトだ。間違えないように)、海外メディアではMuzik Magazineが「手ごわいフォース」と断言し、またMixmag は「最高にエキサイティングでファンキー」と称賛している。

 そんな “エキサイティング”とは、インフュージョンのライヴを総括するときには決して忘れてならない言葉といえるだろう。中身の詰まったライヴ・パフォーマンスと共に、彼らは常に最高のステージを約束してくれるが、そういったこと以外にBIG DAY OUTやSplendour in the Grass といった国内のメジャーなフェスティバルで、いつまでも人気を誇っていられる理由があるだろうか。今年のRoskilde Festival(彼らが唯一のオーストラリアのアーティストとなる)やCreamfields UK、またはグラストンベリー2004といった海外でも一流のフェスティヴァルに、彼らの名前はもうブッキングされているのだ。それに今年はそれ以外にもアルゼンチンでのCreamfieldsの出演や、ルネッサンスやファブリックなどUKでもトップ・クラスのクラブでのゲスト・ギグ、そしてヨーロッパ、アメリカ、アジアを回るツアー・スケジュールなどが組まれている。



 オーストラリアの殆どのエレクトロ系アーティストたちが、国内のゲットーに閉じ込められているなか、インフュージョンだけは世界中のファンたちに愛され続けているが、それはつまり、彼らは良質な輸出品であり、我々の最高のラガー・ビールに似て、世界中の人々を酔わせているということだ。昨年末に行われたアルゼンチンでのCreamfieldsで、熱狂的な南アメリカ人たちの前でプレイしたときのことを、Jamie Stevensはこう語っている。

「すごいことになるだろう、って言われていたんだけど、ステージに上がってみたらそんなふうには思えなかった。だからちょっとひるんだんだけど、でも本当に楽しかったよ。ものすごいエネルギーをもらえるね。ぼくらは今まであれ程エネルギッシュなパフォーマンスをしたことはなかったし、最高に意義のあるライヴだったよ!Manuelがあんなに生き生きしているのも見たことなかったな。オーディエンスたちの反応も素晴らしかった。彼らはジャンプしたり叫んだり腕を振ったりしながら、自分たちを盛り上げているんだ。最高の思い出だよ」

 そしてまもなく彼らはイギリスの伝説的フェスティヴァル、グラストンベリーで、さらに思い出のデータを増やすことになるに違いない。

「またひとつ夢が叶ったんだ」

 とJaimieは続ける。

「イギリスの音楽情報誌で育ったぼくは、NMEを毎週買ってグラストンベリーやIn The Parkなんかのことをよく読んでいたんだよ。そしてとうとう自分もそこでプレイできることになった。出演交渉されたときは夢でも見ているのかと思ったよ」

 グループの大躍進に華やかな生活、世界中を回るツアーにエキゾティックな場所でのプレイ。だがそんな最高の人生を送りながらも、インフュージョンのメンバーたちは現実的で気さくな人柄を失うことはない。

「グラストンベリーにホテルはとったんだけど、たぶん車のなかで寝ることになるだろうね。こういうギグで最高なのは、フェスティヴァルでプレイするバンドたちを全部見られるってことなんだ。それにただで入れるんだし」

正直というかなんというか。



そんなインフュージョンは、すでに多くのエレクトロニック・ミュージック・シーンのグループたちと共にプレイしてきている(ザ・ケミカル・ブラザーズ、アンダーワールド、Paul Oakenfold、カール・コックスなど)。そして2004年のグラストンベリーでは、オアシスやミューズ、キングズ・オブ・レオン、PJハーヴェイ、ネリー・ファータド、ブラック・アイド・ピーズ、Scissor Sisters、モリッシー、ジェームズ・ブラウン、そしてポール・マッカートニーというそうそうたるアーティストたちと同じステージに立つことになるのだ。さらに日本でビッグになるだろう間も(もちろんヨーロッパやアメリカ、UKもだが)、確実に故郷でも大きな存在でい続けることだろう。オーストラリアでは、我々は常に彼らが世界中で大活躍していることを知っている。忠実なファン・ベース、国中でのソールド・アウト・ライヴ、ARIA賞のノミネート、そしてオーストラリアン・ダンス・ミュージック・アワードの受賞歴などは、この広い褐色の大地がこの3人に惜しみない愛を捧げていることを証明しているのだ。

 

 シングル「ガールズ・キャン・ビー・クルーエル」はすでに大爆発し(スーパースターDJ、eliteにも絶賛された)世界中のダンス・フロアを席巻した。それに続く「ベター・ワールド」は、国内外で大変な喝采を浴び、熱心なファン・ベースを拡大し、彼らの輝かしい道を切り開き続けている。そしてこれはまだ始まりに過ぎない。

初のメジャー・レーベルからのLP「シックス・フィート・アバッヴ・イエスタデイ」のリリースに伴い、インフュージョンは大陸横断規模の地震活動を引き起こす準備を整えている。昔を懐かしがったり、コピー・ロックやプレハブみたいなポップを聴くことはもうやめよう。21世紀はインフュージョンが手にしているのだから。