7/31 ジョージ・セル空前の名演3タイトルが登場!ワーグナーのドラマを知り尽くしたセル極め付きの名演。タワーレコード x "Sony Classical" 究極のSA-CDハイブリッド・コレクション 第7回発売
タワーレコード x "Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション第7回発売
ワーグナー:管弦楽曲集/ジョージ・セル(2枚組)
Szell conducts Wagner/George Szell
■品番:SICC10276~7 ■ハイブリッドディスク2枚組|SA‐CD層は2ch ■発売日:2019年7月31日
■定価:¥4,800+税 ■音匠レーベル使用 ■プラスチック・マルチケース ■レーベル: Sony Classical
■日本独自企画 ・完全生産限定 ■世界初SA-CDハイブリッド化 ■初出:2019/06/19
ワーグナーのドラマを知り尽くしたセル極め付きの名演。 セルとクリーヴランド管によるワーグナー録音の全貌。
■セルが1960年代にクリーヴランド管弦楽団と残したステレオによるLP3枚分のワーグナー録音を集大成。初期の「リエンツィ」から、最円熟期の四部作「指環」にいたる10曲のオペラからのオーケストラ曲と「ファウスト」序曲を網羅。「トリスタン」や「タンホイザー」で表出される官能の焔、「マイスタージンガー」で鮮やかなまでに解きほぐされる対位法の妙、「ローエングリン」での清澄で息の長い弦、そして何といってもセルが独自に編曲・構成した「指環」のハイライトにおける立体的な構築性は圧巻。セルは1940年代のメトロポリタン歌劇場における伝説的なワーグナー上演の立役者であり、作品を知り尽くした名匠が精緻に、しかも豪快に描き出すワーグナーは、あらゆる細部に血が通い、クリーヴランド管の有機的な響きが聴く者の心を打つのです。
■『「マイスタージンガー」「オランダ人」では演奏開始の迫力というか風圧に、びっくりする聴き手が多いはず。長大な作品の冒頭にふさわしい威厳を備え、続くドラマへの期待をとことん高める。コーダにかけてのリタルダンドをはじめ、即興性に富む巨匠芸の連続だ。「タンホイザー」では各主題の性格を序曲の中で見事に描き分ける。「リエンツィ」」の大詰めではリタルダンドの減速もつかの間、すぐにアッチェルランドのアクセルで大見得をきってみせる。オペラではなく、ゲーテの「ファウスト」への導入として書いた珍しい序曲を敢えて録音したのも、ワーグナーのスペシャリストの自負だろう。「ローエングリン」で垣間見せるメトロギー(神話)の世界、「トリスタン」の「前奏曲と愛の死」で濃厚に漂うエロス&タナトス(愛と死)の危険な匂いなど、すべてがベテランのオペラ指揮者の仕事である。中でも「リング」の6曲は、セルが死の2年前に残したワーグナー解釈の総決算といえる。「マイスタージンガー」や「リエンツィ」の強烈な迫力、いささか芝居がかったテンポ変動は影を潜めている代わり、響きの透明度が一段と高まり、ワーグナーの管弦楽法を細部まで鮮明に再現していく。』(池田卓夫、ライナーノーツより)
■LP発売時のジャケット・デザイン使用 日本独自カップリング
■28ページの別冊解説書 ライナーノーツ:①MET仕込みのワーグナーのドラマをクリーヴランドに移植したセル/池田卓夫 ②ワーグナーの求めに万全に答えた演奏(1970年)/黒田恭一 ③セルの強力な意思力が反映したワーグナー(1970年)/小石忠男 ④ジョージ・セル&クリーヴランド管弦楽団によるワーグナー作品演奏記録 ⑤曲目解説 ⑥リマスタリング・ノート/アンドレアス・K・マイヤー 図版:クリーヴランド管弦楽団のプログラム冊子の公演曲目ページ(2点)を含む、10点掲載
[収録曲]
ワーグナー
DISC1
1.楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
2.楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
3.歌劇「タンホイザー」序曲
4.歌劇「さまよえるオランダ人」序曲
5.「ファウスト」序曲
6.歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
DISC2
7.歌劇「リエンツィ」序曲
8.楽劇「ニーベルングの指環」ハイライト
(1)ワルハラ城への神々の入城(ラインの黄金)
(2)ワルキューレの騎行(ワルキューレ)
(3)魔の炎の音楽(ワルキューレ)
(4)森のささやき(ジークフリート)
(5)夜明けとジークフリートのラインへの旅(神々の黄昏)
(6)ジークフリートの葬送行進曲と終曲(神々の黄昏)
クリーヴランド管弦楽団
指揮:ジョージ・セル
[録音]1962年1月26日、1962年1月26日(1、2、3)、1965年12月10日&11日(4-7)、1968年10月11日&12日(8(1)-(4))、1968年10月7日(8(5)(6))、クリーヴランド、セヴェランス・ホール
[オリジナル・プロデューサー]トーマス・フロスト(1-3)、ポール・マイヤース(4-7)、アンドルー・カズディン(8) ADD/STEREO
■リマスタリング・ノート
当ボックスはジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団がコロンビア・レコードに残したステレオによるワーグナー・アルバム3枚分の音源の全てを、発売順に2枚のハイブリッドディスクに収録したものだ。オリジナル・マスターは、1962年発売のBC 1245(DISC1 1-3)と1966年発売のMS 6884(DISC1 4-6, DISC2 1)は3トラック、1969年発売のMS 7291(DISC 2 2-7)は4トラックである。これまでの当シリーズのセルのリマスタリング・ノートでも記してきた通り、3トラック録音は1950年代末から1960年代前半にかけてのアメリカにおけるオーケストラ収録の定石であり、ごくシンプルなセットアップながら、空間性と精細さとを両立させることができる優れた収録方法だった。4トラックで収録された「指環」は通常の3トラックのセットアップに加えて、ホールの残響成分を4トラック目に収録してあり、リミックスの際に音質を調整できるように工夫されている。
セルとクリーヴランド管のエピック~コロンビア録音は、2018年に106枚組のボックス・セット(George Szell - The Complete Album Collection: 8898547185-2)がソニー・クラシカルで発売されるまで、2013年の韓国ソニー・ミュージック製の49枚組「George Szell The Edition」(8035811791-2)を除いては、不思議なことにワールドワイドで網羅的にCD化されたことがなかった。
もちろんセルの録音はコロンビアの重要なカタログであるため、CD初期からさまざまな形でCD化されていた。最も早いものは1980年代前半からLP発売と並行してCD化された名盤カタログ・シリーズ「Great Performances」(新聞の一面を思わせるシリーズ・デザインでカタログ番号がプリフィクスMYKで始まるタイトル)であろう。その後セルのアーティスト写真とサインをあしらったアーティスト別のシリーズ(カタログ番号のプリフィクスはMK)でもCD化が継続(もしくはカップリング替えで再発売)されたが、同時期のブルーノ・ワルターやグレン・グールドのシリーズほどタイトル数が網羅されることはなかった。その後セルの録音のCD化は、1990年代に始まる作曲家やテーマ別に編まれたソニー・クラシカル初のバジェット・プライス・シリーズであったEssential Classics(プリフィクスはSBK)で主に続けられた。
これらCD初期のシリーズでのリマスターは、アナログ時代にコロンビアのプロデューサーだったハワード・スコットやジョン・マクルーアがデジタル化を手がけたものが多いが、特にCD化のスタッフがクレジットされていないものも多かった。MYKの中にはステレオ・プロダクション・マスターをそのままデジタル・コピーしただけと思わるような粗雑なリマスターもあり、刺激的な高域やアナログのコピーテープには付きもののヒスノイズやドロップアウトが耳につくものもあった。その後使用するアナログ・マスターの選択にも配慮されるようになり、ヒスノイズの低減や不具合な部分の修正など、時代に合わせた音の調整がきっちりと行われるようになって徐々にクオリティは向上し、特にリマスター・スタッフも明確にクレジットされるようになったSBKシリーズの後半のタイトルは、そうしたポリシーが徹底されるようになった。
セルのワーグナー録音はすでにMYKのシリーズで2枚分がCD化されており、それとほぼ同時期の1984年には、セルに関しては先駆的な仕事をしてきた日本のソニー・ミュージックが手掛けた最初のセルのCD復刻シリーズ「NEW REMIX MASTER セル/クリーヴランドの芸術」の中で、すでに1984年「指環」管弦楽曲集がCD化されている(カタログ番号は32DC210)。32DCのリマスターは、ヒスの多いMYKとは異なり3トラック・マスターからリミックスされていると思われ、比較すると音質に余裕と深みがある。「指環」管弦楽曲集については1992年にSBK盤で新たにリマスターされ、この時はベジュン・メータ(現在はカウンターテナーとして活動)がCD化を手掛けていてさらに聴きやすい音になってはいるものの、聴感上の印象をよくするためか中音域を持ち上げ、録音レヴェルをかなり上げた音作りで、かえって各パートの鮮明さが薄れる結果となっていた。
「指環」管弦楽曲集のクオリティがさらに向上したのは、2000年のセル没後30年に際して日本のソニー・ミュージックの要請でDSDマスタリングされた音源(SRCR2548)で、同じリマスター音源がほぼ同時期に発売されたSA-CDシングルレイヤー盤にも使われ、オリジナル・マスターのサウンドのエッセンスがかなり再現されている(日本盤SRGR731、インターナショナル盤SS 89035)。「指環」以外の曲については、CD初期以来今回が久々のニュー・リマスタリングであり、DSDテクノロジーを用いた最初のリマスターとなる。
今回の新たなDSDリマスターに当たっては、特に「指環」に関しては2000年のDSD音源を中心に、こうした過去のCDやCDマスターの一部も聴き比べつつスタジオでの仕事を進めた。オリジナル・マスターに刻み込まれた情報量と質をなるべく損なわなずに、SA-CDという大容量のメディアに漏れなく盛り込むことができるよう、アナログ・テープの再生からリミックスのバランスにいたるまで、あらゆる段階で細心の注意を払った。それゆえ過去のCDと比較すると一聴したところの派手さは感じされないかもしれないが、耳を澄ましていただければオリジナル・マスターのダイナミック・レンジの広さ、鮮度の高さ、そして何よりもセルが気を配った精緻なオーケストラのバランスがこれまでよりも精細に再現されていることにお気づきになると思う。
アンドレアス・K・マイヤー