エリック・サーモン
エリック・サーモンについて語る前には、息を深く吸い込んでおかなければならないだろう。彼の長いキャリアにおける数々の業績の半分にも届かないうちに息切れしてしまうだろうから。

ヒップホップの世界において、エリック・サーモンほど常にハイプでありつづけてきた存在は稀である。パリッシュ・スミスとともにEPMD(Erick & Parish Making Dollars)を結成、数々のヒップホップ・クラシックを生みだし、ソロ・アーティストとしてもプラチナ・アルバムを獲得、さらにはプロデューサーとしてレッドマン、メソッドマン、アンヴォーグ、Run DMCなどを手がけてきた。1988年から1992年の間にはEPMDとして4枚のゴールドアルバム(50万枚以上のセールス)を発表。これは当時のヒップホップとしては驚異的な数字で「You Gots To Chill」「So What Cha Sayin’」「Crossover」「Headbanger」などのヒットシングルを残した。EPMD解散後もソロとして活動、『No Pressure』『Double Or Nothing』というヒットアルバムを発表。また並行して盟友レッドマンの『Whut Thee Album』やメソッドマン/レッドマンの『Blackout』などを手がけ、さらにはキース・マーレーらとともにDef Squadとして『El Nino』、さらにはEPMDの再結成アルバム『Back In Business』を発表と止まることなく活動を続けてきた。ソロとしても2000年にエリック・オナシス名義で『Def Squad Presents Erick Onasis』を発表、このアルバムにはレッドマンをはじめジャ・ルール、キース・マーレー、スリック・リック、トゥ・ショートなど豪華なゲストが顔を揃えて話題になった。2001年にはJ Recordsに移籍、マーヴィン・ゲイの未発表トラックをフィーチャーしたシングルを含むアルバム『Music』をリリース。再びエリック・サーモンという名前をヒップホップ・シーンに刻みこんだ。

そして前作から1年という短いインターバルで完成した今回の『React』。すでに先行シングルとしてクラブなどで大ブレイクしているタイトル・トラックはトゥルース・ハーツの「Addictive」などで盛り上がるインドネタなトラックとして早くもクラブ・アンセムとなっている。アルバムにはジョン・ブレイズやメガハーツといったホットなプロデューサー、さらにはレッドマン、キース・マレー、ラー・ディガといった豪華なゲストも参加しており、エリック・サーモンの輝かしいキャリアに新たな1ページを加えている。