ダニエル・バレンボイム


 1942年11月15日、ブエノスアイレス生まれ。5歳のとき母親にピアノの手ほどきを受け、その後は父エンリケに師事。少年時代から音楽の才能を発揮し、7歳で最初の公開演奏会を開いてピアニストとしてデビュー。1952年、イスラエルに移住。2年後の1954年夏、ザルツブルクでイーゴリ・マルケヴィチの指揮法のマスタークラスに出席。この年ヴィルヘルム・フルトヴェングラーを訪ね、アドバイスを受ける。
 1952年、ウィーンとローマでヨーロッパ・デビュー。1957年にはレオポルド・ストコフスキーの指揮で、ニューヨークにおいてオーケストラとの協奏曲デビューを果たす。ピアニストとしての名声を確固たるものとした後、1960年代半ばからイギリス室内管弦楽団とのモーツァルト作品(ピアノ協奏曲・交響曲・歌劇)の演奏で指揮者としての活動を開始し、1970年代からは、欧米各地のオーケストラに客演を開始。パリ管弦楽団(1975年~1989年)、シカゴ交響楽団(1991年~2006年)の音楽監督を歴任。
 オペラ指揮者としての活動は、1973年のエディンバラ音楽祭におけるモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」に始まる。1970年代はベルリン・ドイツ・オペラに客演し、1981年にはバイロイト音楽祭に「トリスタンとイゾルデ」でデビュー。1999年までほぼ毎年バイロイトに登場し、「指環」全曲、「マイスタージンガー」、「トリスタン」を指揮。1992年からはベルリン国立歌劇場音楽監督に就任。2007年からはミラノ・スカラ座の「スカラ座のマエストロ」というタイトルで事実上の首席客演指揮者に就任している。1999年には、友人でパレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードとともに、国家としては対立を続けているイスラエルとアラブ諸国の優秀な若手音楽家を集め、ゲーテの「西東詩集」から命名されたウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を創設。
 録音にも積極的で、1955年の初録音以後、ピアニスト・指揮者として数多くの録音をEMI、ドイツ・グラモフォン、ソニークラシカル、ワーナー・クラシックス、デッカなどのメジャー・レーベルに残している。ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームス、ブルックナーの交響曲全曲、ベルリオーズの主要管弦楽曲・声楽曲、モーツァルトのダ・ポンテ・オペラ、ワーグナーの主要歌劇・楽劇、モーツァルトとベートーヴェンのピアノ・ソナタ、ピアノ協奏曲全曲を含むバッハからシェーンベルクにいたるピアノ作品や室内楽、モーツァルトからマーラーにいたるドイツ歌曲など、膨大なレパートリーの録音が発売されている。中でもベートーヴェンのピアノ協奏曲はピアニストとして、指揮者として、そしてピアノと指揮者を兼ねた弾き振りで2回と、計4回録音しているほか、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は3回(映像を入れると5種類)にわたって録音している。
 ウィーン・フィルとも深い関係を保ち、定期演奏会の常連であるほか、国内外の演奏旅行や音楽祭でも共演を重ねている。ニューイヤー・コンサートには2009年以来2度目の登場となる。