【インタビュー】


「ウィーン・フィルは自分が演奏したいというスタイルをもち、私も自由に指揮します。その方向性が見事に一致し、すばらしいコンサートが生まれるのです」~ダニエル・バレンボイム2度目のニューイヤー・コンサート

伊熊よし子

2013.12.27

ウィーン・フィルから大いなる信頼を受け、深い絆で結ばれているダニエル・バレンボイムは、2009年に初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの指揮台に立った。そのときは「平和」をテーマに掲げ、プログラムもそれに即したものだったが、今回も新たに「世界の平和」をテーマに選曲を行っている。

2013年10月初旬、ベルリン国立歌劇場のベルクの歌劇「ヴォツェック」の本番前に、シラー劇場でマエストロに話を伺った。

「私は常に音楽を通して世界の平和を強く訴えたいと思っています。2009年のニューイヤー・コンサートでもそれを実現しましたが、2014年は第一次世界大戦の開戦100年にあたる年ですので、これをテーマの主軸に据えたいと考えています。というのは、第二次世界大戦はみなさんよくご存じで話題となりますが、第一次世界大戦のことはいまやすっかり忘れられている。どうしてこの戦争が起きたのか、いかに大変だったのか、将来のためにみんなが知る必要があると思うからです。」

 バレンボイムはそのための作品をいくつか選び、これからウィーン・フィルとの話し合いのなかで詳細を決めたいと語った。その時点で決まっていた作品に関しては…。

「平和と関連するヨーゼフ・シュトラウスの《平和の棕櫚》はぜひ演奏したいですね。それから私が1999年にパレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードと創設した、パレスチナとイスラエルの若手音楽家で組織するウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の結成15年を記念し、ヨハン・シュトラウス2世の《エジプト行進曲》を加えたい。そしてウィーンの自然の美しさは平和に通じると思いますので、ドナウ河沿いの町のクロスターノイブルクの修道院設立900年を祝し、シュトラウス2世の《ウィーンの森の物語》を、さらに2014年に生誕150年を迎えるリヒャルト・シュトラウスの歌劇《カプリッチョ》から《月光の音楽》を考えています。」

バレンボイムは、初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの演奏を聴いたとき、「立ち見席でもいい」と思うほど深い感銘を受けたという。

「ウィーン・フィルはシュトラウス一家をはじめとするワルツやポルカを熟知し、旋律、フレーズ、リズム、テンポなど、すべて自分たちが演奏したいというスタイルで自在に演奏します。ですから、私も自分の本当に表現したい方法で自由に指揮をする。その結果、ふたつの方向性が見事に一致し、音楽が融合し、すばらしいコンサートとなるのです。」

 ウィーン・フィルは「特別な音をもっている」と彼はいう。それは世界のどのオーケストラとも異なる特有の音で、音楽が自然に流れ、独創性を保持し、指揮者冥利に尽きると。

「ニューイヤー・コンサートは単なる娯楽作品を演奏したり、アンコールピースだけを並べるものではありません。ひとつのドラマをもち、創造性に富んでいます。ウィーン・フィルもリハーサルから真剣勝負ですが、指揮者も責任重大です。でも、私はすべての音楽を楽しみながら指揮しますよ。」

 彼は音楽家だった父親から「音楽をよく考えて演奏すること」という精神を伝授された。それを座右の銘とし、どんな作品を演奏するときもスコアを深く読み、熟考する。ニューイヤー・コンサートも各曲の真意に寄り添う、洞察力に富む演奏が披露されるに違いない。

(2013年11月)

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