チープ・トリック

 リック・ニールセン(g)とトム・ピーターソン(b)が8年に結成したバンドFUSEを母体に、後にロビン・ザンダー(vo.)、バーニー・E・カルロス(ds)が加わって4年にシカゴ郊外で結成し、7年にデビュー。2ndアルバムまでリリースを果たすも本国ではブレイクとまではいかない一方、日本では、ビートルズの流れを汲んだ、メロディアスでパワー・ポップ然とした楽曲に加え、イケメン2人と対照的にコミカルなビジュアルの2人というバンド編成も評判を呼んでアイドル的人気を博し、78年4月には早くも日本武道館公演が実現。これを録音した、当初日本限定企画盤だった『チープ・トリックat武道館』が本国アメリカに逆輸入されじわじわと売り上げを伸ばしたことから9年に本国でもリリース。バンドにとって初の全米TOPり(シングル「甘い罠」も全米TOPりと、初の大ヒット・シングルとなった)を果たす。前年のボブ・ディラン『武道館』も逆輸入ヒットをしていたため、 <武道館>の名は欧米において大規模コンサート会場の代名詞的存在となっていった。

 全米でのブレイク後、チープ・トリック以外にもカーズやザ・ナックらが頭角をあらわした事でパワー・ポップがロック・シーンの1つのジャンルとして確立され、彼らがその黄金期の一翼を担うも、80年にトム・ピーターソン(bass)が脱退。しかしその後87年にトムが復帰したオリジナル・メンバーでのアルバム『永遠の愛の炎』が大ヒットを記録し、同名タイトルのシングルは彼らにとって初の全米No.1シングルとなった。

 90年代初頭のグランジ/オルタナ・ブーム到来に乗じたウィーザーらの登場と共に再びパワー・ポップに注目が集まり始めると、パンク、ガレージ、グラム、ハード・ロック、サザン、オルタナ等の要素も飲み込んだチープ・トリックの音楽性へのリスペクトを公言する次世代のバンド達が続々登場。世界規模の再評価につながっていき、2年には「ロックの殿堂入り」を果たした。現在までに5,000公演以上のライヴ、2,000万を超えるレコード・セールス、40以上の世界各国でゴールド&プラチナム・ディスク認定、という実績を誇る。デビュー40周年の今年、目となる最新アルバム『ウィア・オールライト』をリリースしたばかり。